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【21/和馬】告白①
「好きな子なら、もういる」
優斗の目を見る。
「だから教えてやる」
言わないと決めていたのに。言ったら全てが壊れてしまうのに。オレの口は勝手に動いた。
「オレはおまえが好きだ」
優斗が目を見開く。その目には、薄っすらと涙が浮かび上がった。きっと逃げ出したい気持ちでいっぱいだろう。でも、逃さない。
オレは優斗の両肩を掴んだ。
「好きだ、優斗」
一度言葉にしてしまったら、もう止められなかった。
優斗の唇は、何かを言いかけてはやめるように動いている。きっとオレを傷つけない方法を探しているに違いなかった。
「ごめん、好きだ……」
優斗を困らせる気はなかった。でも、抑えていた気持ちが溢れだし、コントロールがきかなくなっていた。
「優斗が好きだ」
何度言っても足りないくらい、オレは優斗が好きだ。そんな気持ちを伝えてしまった今、あとは優斗次第だった。恋人になるか、友達のままか、絶交か……。
「僕……」
優斗は静かに涙をこぼした。
「僕は……」
そして、喉の奥につっかえた言葉を絞り出すように呟く。
「僕は……ごめん……」
分かりきった答えだった。でも、深く刺さった。両手から力が抜ける。
「ごめん、自分の気持ちが……」
「いや、いいんだ……ごめんな」
優斗の言葉に、勝手に深い意味をくっつけて縋って……バカな自分を笑った。
もうおしまいだ。なのに、ここからどう元の関係に戻るかを考えている自分がいた。戻れるわけないのにな……。
「違うんだ。僕……僕……」
優斗がオレの胸元を掴む。
「僕、変なんだ……蒼生にキスされた時、吐き気がするほど嫌だったんだ。それは相手が男だからだと思ってたのに……」
優斗が顔を上げる。ぽろぽろと溢れる涙があまりにも綺麗で、つい手を伸ばし触れた。
「ねぇ和馬……どうして僕は、和馬とキスがしたいの?」
「え……」
混乱した。動揺した。オレとキスがしたいなら、それは……。
「和馬に好きだって言われて、なんか……変なんだ。胸が苦しいし、涙が止まらない」
優斗もオレのことが好きだと思っていいのか? キス、してもいいのか? したいって言ってたよな? ここでやらなきゃいつやるんだって話だよな? してもいいよな? 今だよな!?
脳内は満場一致でキスのGOサインを出している。オレは優斗を見つめた。
「ごめん、自分で自分の気持ちが良くわからなんぐっ……」
両手で頬を包み込み、キスをした。本当はもっと優しくしてやりたかった。でも、ずっと抑えていた想いが爆発してしまい、優斗の唇を食べるように激しくやらかした。
「……どうだ? 分かったか?」
「か……和馬っ……」
優斗は肩を上下させながら息をした。
「嫌だったか?」
親指で、そっと唇をなぞる。うっすら開いた唇が、オレの欲情を誘った。
「嫌じゃなかった……」
「なら、優斗もオレのことが好きなんだな」
「うん、そうみたい……僕も和馬が好き」
オレのことが好き。その言葉が嬉しくて……嬉しすぎて、夢じゃないかと思った。
「もう1回、キスしてもいいか?」
優斗が頷く。両手で優斗の頬を包み込むと、
今度はそっとキスをした。
すぐに唇を離し、優斗の表情を確認する。笑顔だった。
「嬉しい」
「優斗、好きだ」
笑い合って、そしてまたキスをした。
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