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【22/優斗】身体①
「いつまで寝てるのー?」
眠くて起きられない。夜遅くまで起きていたわけでもないのに身体が重い。
「あら♪」
蒼生の家の布団は軽く、肌触りも良く、いつも以上に抜け出せなかった。
「仲良しね~♪」
特に、この抱き枕は温かく――
「!?」
跳ね起きた。抱き枕だと思っていたものは、蒼生だった。声にならない悲鳴をあげながら、スヤスヤと眠る蒼生を蹴る。
「んっ……あぁ、おはよう……」
眠そうな目を擦る姿すら爽やかな顔を睨んだ。
「なんで一緒に寝てんだよっ!」
「なんでって……君はベッドに寝たはずだろう? こっちが聞きたいね」
「……っ!」
とぼけているのか、本当に分からないのか……とにかくユウの仕業に違いなかった。
「なっ、何もしてないだろうな?」
「何もって……お母さんの前でそういう冗談はやめてくれないかな」
そう言われてみれば、声がしていたような……慌てて首を180度回転させると、蒼生の母親がニヤニヤしながら立っていた。
「ラブラブね~♪」
「あっ、いえ違っ……」
「お母さん」
蒼生はたしなめるように母親を呼んだ。
「うふふ♪ じゃあ、朝食できてるから、早く降りてきなさいね!」
母親がドアを閉めると、蒼生はため息をついた。
「ごめんね、お母さんは朝から晩までテンションが高いんだ」
「別に……ってか、もしかしてユウのこと、話してある?」
同じ布団で寝ているところを見られた。気色が悪い状況だったのに、母親は引いていなかった。
だから蒼生は、母親にユウの話をしているのかもしれないと思った。
「いや、話してないよ」
「そうだよな、さすがに――」
「でも、もし君が今、ユウと入れ替わったら恋人だと紹介するよ」
「えっ」
「何でも話せるし、話したいと思っているんだ」
「そうなんだ……」
蒼生の口ぶりから、母親との良好な関係を感じとる。裕福な環境に、子供の全てを受け入れる両親……蒼生の落ち着きや余裕、優しさは、愛情をたっぷり受け取った賜物なのだろう。
僕の家とは真逆すぎて、なんだか胸が苦しくなった。
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