53 / 84

【22/優斗】身体①

「いつまで寝てるのー?」 眠くて起きられない。夜遅くまで起きていたわけでもないのに身体が重い。 「あら♪」 蒼生の家の布団は軽く、肌触りも良く、いつも以上に抜け出せなかった。 「仲良しね~♪」 特に、この抱き枕は温かく―― 「!?」 跳ね起きた。抱き枕だと思っていたものは、蒼生だった。声にならない悲鳴をあげながら、スヤスヤと眠る蒼生を蹴る。 「んっ……あぁ、おはよう……」 眠そうな目を擦る姿すら爽やかな顔を睨んだ。 「なんで一緒に寝てんだよっ!」 「なんでって……君はベッドに寝たはずだろう? こっちが聞きたいね」 「……っ!」 とぼけているのか、本当に分からないのか……とにかくユウの仕業に違いなかった。 「なっ、何もしてないだろうな?」 「何もって……お母さんの前でそういう冗談はやめてくれないかな」 そう言われてみれば、声がしていたような……慌てて首を180度回転させると、蒼生の母親がニヤニヤしながら立っていた。 「ラブラブね~♪」 「あっ、いえ違っ……」 「お母さん」 蒼生はたしなめるように母親を呼んだ。 「うふふ♪ じゃあ、朝食できてるから、早く降りてきなさいね!」 母親がドアを閉めると、蒼生はため息をついた。 「ごめんね、お母さんは朝から晩までテンションが高いんだ」 「別に……ってか、もしかしてユウのこと、話してある?」 同じ布団で寝ているところを見られた。気色が悪い状況だったのに、母親は引いていなかった。 だから蒼生は、母親にユウの話をしているのかもしれないと思った。 「いや、話してないよ」 「そうだよな、さすがに――」 「でも、もし君が今、ユウと入れ替わったら恋人だと紹介するよ」 「えっ」 「何でも話せるし、話したいと思っているんだ」 「そうなんだ……」 蒼生の口ぶりから、母親との良好な関係を感じとる。裕福な環境に、子供の全てを受け入れる両親……蒼生の落ち着きや余裕、優しさは、愛情をたっぷり受け取った賜物なのだろう。 僕の家とは真逆すぎて、なんだか胸が苦しくなった。

ともだちにシェアしよう!