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2話

「雨降ってきたね」 「そうですね」  月瀬家の駐車場に車を停めていると、ぽつりぽつりと車のフロントガラスに模様を描く。初七日法要を終え、参列者が帰路に着いている頃でよかったと潤は安堵した。 「嘉哉さんらしい天気だね」 「確かに、結構強引で俺様みたいな感じだったのに、さり気なく気遣ってくれているんですよね」  豪胆なようで繊細。気配り上手だった彼のような天気だ。 「でも、愛情が伝わってくるから不思議」  言いながら、光はシフトレバーをつかんでいる潤の手に触れてきた。潤んだ瞳と上気した頬がドアップで映り、唇に柔らかな唇が触れる。潤の眼鏡と、シャツのネクタイとボタンを外された。  彼の手が潤の後頭部を抑える。がっつきそうになっている光の肩をつかみ、助手席に押しつけた。唇で唇を食んだり、触れたりするキスを何度もしながら、パサついた黒髪を撫でる。  後頭部をつかんでいない手を恋人つなぎにし、思うさま口内を愛撫する。薄い胸を喘がせ、とろりと溶けた青い瞳は、苦しそうに何度も瞬きをする。 「あっ、ぅあっ。お焼香臭いから、嗅がないで」  車内の行為で火をつけられてしまったせいか、性急に敷布団に押し倒し、帯をほどく。あらわになった白い肌。はだけた喪服からのぞくすらりとした脚と白い足袋。淡い色の乳首を立てて、潤んだ瞳で誘惑している姿を知っているのは自分と嘉哉だけだ。  うなじに花を散らしながら、乳首らへんを指先でもてあそぶ。光自身の匂いと焼香やしょうのうの香りが混ざり合って、ひどく背徳的で淫らな匂いがする。未亡人の匂いだ。 「なんでですか? いい匂いしているのに」  乳首を音を立てて吸いながら、触ってほしそうに腰を揺らしていた光自身の先端を強く指の腹で擦る。 「いやっ、漏れるッ、ああっ、イヤッ……ッあああっ」  身体をよじればよじるほど、指が先端に食い込み、溝の中に指が入っていきそうになる。何度も擦っていると、透明な汁が敷布団や肌や襦袢を濡らす。 「いい子ですね。でも身体動かすと、指、入っちゃうかもしれませんよ」  喉奥から引きつった声を出し、目を見開いたままの光に微笑みかけ、潤滑剤をまとった指で後孔の表面に触れる。 「もしかして、拡げていたんですか?」  そっと指先を後孔に入れると、潤滑剤がとろりと垂れてきた。彼は、嫌々と首を横に振るが、耳まで真っ赤になっている。 「言わなければこのままですよ」  一度指を引き抜き、再度潤滑剤を滴るほどまとった指を中に入れ、そのまま動かさずに待つ。数秒、数分経った頃だろうか、光が重い口を開いた。 「ずっと疼いてて、しても治まんなくて、だから、」  欲しい、と舌で湿らせた唇がてらてらと誘う。 「後ろ向きで座ってください」 「んぁ゛、あ゛ッ――――ッ」  背広と下肢の衣服を脱ぐ。光の無意識のうちに逃げようとする腰を押さえつけ、欠陥が浮き出た凶器を最奥まで飲み込ませる。入れただけで、達してしまったのだろうか、身体と内壁が細かにけいれんしている。  張り出した先端で最奥まで突き入れてから、前立腺をえぐるような角度で何度も突き上げる。体液を噴き上げる先端をぬぐいながら、触ってほしそうに尖っている乳首を摘まんだ。 「あああっ、ア゛ッ、んッあああっ」  はだけた喪服と黒髪からのぞく跡をつけたうなじ。欲望のままに動かす腰の動きと、最奥をえぐるモノを包み込み奥へと誘う肉ヒダを振り切るように腰を動かす。 「喪服に身を包んだあなたは、普段と違って色っぽいですね。まるで、禁忌の存在に触れてしまった感覚です。今まで何度も姦通して来たのに、こんなにも興奮させるなんて……悪い人だ」  旦那様を喪った光(奥様)を自分のものにする悦びに、身体が打ち震える。朱を散らした白磁の肌と足袋の人工的な白さ。それらと喪服の黒のコントラストが背筋にぞくぞくとした快楽を走らせる。  潤の瞳に宿る劣情に気付いたのか、血色のいい唇が震え、「ごめんなさい」と小さく呟いた。余りの興奮に、いやらしい笑みが浮かぶ。 「あああっ、んあ゛ッ」  服を脱がしながら、松葉崩しに持ち込むと、汗でぬめった肌が擦れ合い、締め付けがきつくなる。最奥に突き上げるたびに、光の内壁がけいれんし、体液を噴出させている。凄絶な快楽に、涙を流している顔を見たら、タガが外れる。誘う唇に口づけ、舌を絡ませ合う。  そっと、尖った乳首を撫でると、内壁がキュッと狭まり、込み上げてくる射精感に堪えるように、熱い息を吐く。それすらも、愛撫になるらしく、苦しそうに顔を歪ませている。 「クッ……」  痩身を愛撫し、容赦なく責め立てる。汗なのか体液なのかわからないほどぐちゃぐちゃに濡れている光の身体をかき抱く。無理をさせてはいけないと思うのに、熟れた身体は男を悦ばせる。整った顔を喜悦に顔を歪ませ、どこまでも求める。 「出しますよ」 「ちょうだい。じゅん、の欲しい」  男の精をねだるように締め付ける内壁に、白濁液をぶっかけた。荒い息と汗でぬめった身体はすぐ火照り、どちらともなく腰を揺らめかす。終わらない行為の予感に、雄っぽい笑みを浮かべ、張り付いた髪をかき上げた。 「付き合ってくれますよね?」  答えは濃厚なキスでふさいだ。

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