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王の男たち_03

「っお前、はしたないぞ、処女に決まっ……っンん、ぅ……ッ」  しまった、嵌められた。俺が怒って口を開くことを見越して、渋谷は下品極まりないことを言ったのだ。  あっという間に渋谷は俺の口内へ舌を捩じ込むと、くちゅりと舌裏を舐め上げてきた。それだけでは飽きたらず、渋谷の大きな手がするりと下りて昂ぶ性器を服の上から揉み込んでくる。ぞくぞく走る快感と俺の体を許可なく蹂躙し支配しようとする渋谷に怒りが沸き上がり、眉根を寄せて渋谷の舌を思いきり噛んでやった。 「っいっってえ! なにすんだよ!」 「は、ぁ……っなにするは、こっちのせりふだ……!」  痛みで唇が離れた隙に渋谷の胸を力強く押し、じりじりベッドの端へと逃げる。中途半端に捲れ上がっていたシャツを勢いよく下ろしながら、これ以上近づいたら許さないと荒い息を吐いて渋谷を睨む。ぐっと渋谷は喉を鳴らすと、深いため息を吐いてぐしゃぐしゃと自らの髪を乱した。  どうしてそんなに悲しそうな顔をする、やめろ、俺が悪いことをしたみたいじゃないか。 「……その男はよくて、俺はなんでだめなわけ」  渋谷はあからさまにしょんぼりと眉を下げ、俺の首筋を指先でくすぐってくる。そこには千昭がつけた跡と、渋谷がつけた跡が並んでいた。 「千昭とは賭けをしている。俺様が記憶を思い出すまで、俺様の体に触れることを許可しているだけだ」 「なんだよそれ――つまり、俺も白金と賭けをすればいいんじゃね?」  さっきまで落ち込んでいたように見えた渋谷は一気に表情を明るくして、ずりずりと俺のほうへと距離を詰めてくる。もうベッドの端にいる俺には逃げ場がなく、あっさり渋谷に追い詰められてしまった。 「お前とする賭けなどない」 「あるじゃん――俺、昔白金に出会ってんだろ? それを俺が思い出せるか賭けようぜ」 「は?」 「白金、俺に思い出してほしいんだろ?」 「まあ、そうだが」 「だったら、俺が思い出すまで、白金の体に好き勝手に触れてもいいよな?」 「はあ? どうしてそうな、おい、まだ、許可して、ないんだが、ぁ……っ!」  勝手にベルトを外すな!  カチャカチャと渋谷は俺のベルトを抜き取り、スラックスのファスナーを下げてくる。  やめろ、セクハラだぞと渋谷の手を思いきり掴んでも、渋谷はちっともやめる気配がない。それどころか、ずるりと俺のスラックスを引き下ろしてボクサーパンツの上から昂ぶる性器を握り込んで来る。 「っんん、ぅ……っふ、ぁ……っ!」  最悪だ、保健室で休もうと思っただけなのにどうして俺は渋谷に勃ち上がったモノを握り込まれているんだと静かな怒りが沸いてくるのに、それでも性器を上下に扱かれると気持ちよくてたまらない。  今すぐ力いっぱい渋谷の体を押しのけなければならないと頭ではわかっている。けれども、体が言うことを聞かない。快感が体中を支配して、俺を蹂躙する。 「っぁ、ああ……っあ! っは、ぁ……っ」 「あー、その声、すっげークる、たまんねーな」 「っおま、なにして……ひぁ、あっ……!」 「……お前、ちんぽまで可愛いな、すげーわ、マジで。男のちんぽとかなしよりのなしだと思ったけど、白金のちんぽだけはありよりのありだな」  下着の上から触られるのさえ恥ずかしいのに、渋谷は太い親指をボクサーパンツにかけるとぐいっと引き下ろして直接握り込んで来る。あまりにも渋谷の手が熱く、ぎゅうっと握り込まれるだけで性器がビクビク震え上がり、とぷりとよだれを垂らしていた。  いやだ、やめろ、やめてくれ、ふるふる首をいくら横に振ろうとも、渋谷はやめてくれない。荒々しい獣のように乱暴だ。男ならば誰だって敏感であろう雁首に指を這わせられ、先っぽと一緒にくちゅくちゅ擦られる。  ここは学校の保健室で、今は俺たち以外に誰もいないけれど、いつ誰が入って来るかもわからない。こんな状況なのに構うことなく性器を扱く渋谷も、ぞくぞく快感が込み上げている俺も、どうかしている。 「っふ、ぅ……っんンっ……」  せめて声だけは抑えようと口を手で覆い隠すと、渋谷は「声抑えんなって、もっと聞かせろよ」と裏筋をぬちゅぬちゅ親指でなぞりながら、性器をぎゅっと握り込んで乱暴に扱く。襲い来る快感の波に、自分の意思に反してゆさゆさと腰が揺れる。はしたない俺の姿を見てか、渋谷が笑い声を上げるからきっと睨むとますます上機嫌に笑みを深めると来た。お前、性格が悪いぞ! 「だーかーらー、潤んだ瞳で睨んでも逆効果だっての。はー……白金、可愛すぎんだろ、もうイっちまえよ」 「っやだ、イってたまる、かぁ……っんく、ぅ……ひあっ、ぁあッ……!」  グチュグチュ、扱く手をいっそう早めてわざと卑猥な音を立てる。鼓膜までも犯され、それでもどうにかイくまいと歯を食いしばっている俺を弄ぶように、渋谷は俺の唇に舌をくちゅりと這わせて来た。そうでもしていないと今すぐにでもイってしまうというのに、どうして口をこじ開けようとしてくるのだやめろと快感の涙で滲む瞳で訴えるのは逆効果らしい。意地悪げに笑った渋谷にかぷりと唇を吸われ、裏筋を激しく擦られた瞬間、頭の中に真っ白い闇が広がり大きく仰け反る。その衝撃で、ドプリと溢れた欲が渋谷の手を汚した。  はずかしい。いっそ死にたい。穴があったら入りたい。  ぐったりした体を渋谷に抱きとめられ、文句を言ってやりたいのに、口からは荒い吐息しかでそうになかった。

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