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王を愛する男たち_03

「お前らのせいで眠たい。俺様は寝るから二人は仲良くしておけよ、喧嘩はするな。おやすみ」  千昭にベッドへ下されると、ネクタイを外してシャツを脱ぎ捨てる。ベルトも邪魔だと引き抜いてから、ベッドの中へと潜り込む。  本当はシャワーを浴びて体をスッキリさせてから眠りにつきたかったけれど、バスルームへ行く気力はとうになかった。夢を見る暇もなさそうだと重たい瞼を閉じると、もそもそと気配を感じて恐る恐る目を開ける。  正面に渋谷、背後に千昭がぴったりはりついていた。男三人で寝ようと余裕のあるベッドなのだから、これほどくっつく必要性は皆無だ。だというのに、隙間なくくっつかれるから身動きがとれない。なんなんだお前ら、ひっつき虫か。 「……おい、なんで二人ともベッドに入って来るんだ」 「俺に抱きしめられるとよく眠れるんでしょ? それにミチルに聞きたいことたくさんあるし」 「起きてから聞いてやる……っぁ! し、ぶや、なにして……っ」 「シャツ脱いだお前が悪くね? 目の前に桃色乳首があったらこうするっきゃねえよな」  シャツにシワを作らないために脱いだのであって、渋谷の太い指で突起をくにくに転がされるために脱いだわけじゃない!  渋谷の手から逃れようと後ろへ下がると、ゴリと尻の谷間にナニかが擦れる。それがわからぬほどウブではない。千昭のジーンズを窮屈そうに押し上げている性器を谷間にズリズリ擦りつけられているのだ。その間にも、渋谷の太い指は俺の突起をくりくりと転がす。  あ、だめだ。やめてくれ。前も、後ろもいじられて、変な気分になる。いや、もうなっているけれど、もっと頭がおかしくなりそうだというのに、ファスナーを下ろす音が聞こえ、ひくりと喉が鳴ってしまう。まさかと首だけ振り返ると、緩く口角を上げた千昭が屹立した性器を尻の谷間にすりと押し当てていた。  今まで千昭のモノを服越しに擦りつけられたことはあるけれど、生で見ると想像以上に大きくて長い。俺のモノとまるで違う。アレを俺に挿れる気なのか、正気なのか? ばくばくばく、心臓が爆発しそうだ。 「大丈夫、まだ挿れたりしないよ」  なにが大丈夫なんだ! ぜんぜん大丈夫じゃないだろう、その勃起具合は!  千昭の大きな両手に尻たぶを揉みしだかれ、ぐいっと寄せ上げられる。尻を揉まれて気持ちがいいわけがない。これは気のせいだと言い聞かせている俺を見透かしたように、千昭のモノが谷間に挟まれた。熱い、まるで灼熱のようだ。  ズリュズリュ。千昭が腰を動かすたびに、寄せ上げられた尻の谷間で熱い昂りが擦れる。徐々にピストンが早くなり、千昭から漏れた熱っぽい吐息がうなじをくすぐるから、ビクビクと仰け反ってしまう。  ほんとにもうだめだ、いやだ、これ以上俺を変にしないでくれ、俺の体なのに俺じゃなくなるみたいだ。秘部が熱いモノを求め、キュンキュンと締めつけているなんて、どう考えても俺の体じゃない。 「ぁっ、ああっ……、っちあき、やぁ……っ!」  今度は前へ進もうとすると「っミチル、可愛い、好きだよ」と千昭に顔を覗き込まれ、熱っぽく囁かれ、どうしたって視線をそらすことができない。  ああ、俺のことを求めている雄の顔だ。そんな顔をされてしまったら、千昭の気持ちを拒むことができない。したくない。やっぱり俺にとって千昭は特別な男なのだと実感する。千昭の声、視線で性器がビクビク震え上がるのだから。  どうしよう、渋谷に気づかれる。気づかれる、じゃなくて、きっとすでに気づかれている。太腿をもじつかせながら、ゆっくり視線を渋谷へ向けると、呼吸さえ奪うほどの深い口づけをしてきた。 「っんむ、……っは、……っ」    ふぅー。渋谷の熱い吐息が口内に吹き込まれる。  あ、気持ちいい。もっと、ほしい。  自然とまつげが震え、渋谷の首に両腕を回す。ふっと渋谷の笑い声が聞こえ、渋谷の厚ぼったい舌に舌裏をちゅくちゅく舐め上げられた。  昨日まで確かに渋谷は俺の可愛い青い鳥だった。それだけだった。だけど今は、どうしようもなく渋谷を求めている。千昭も、渋谷も愛おしく思ってしまう俺はどう考えても頭がおかしい。 「あー……白金可愛すぎ、毛布マジで邪魔、白金の可愛いとこ見られねーじゃん、蹴落としていい?」 「腹が立つけど渋谷くんとは意見が合うね。ミチルの可愛いところ隠しちゃう毛布はいらないよね」 「あっ、だめ、だ……っ」  だから、お前らはどうしてそうも結託するんだ!  俺が毛布を掴むより先に、にやりと口角を上げた渋谷によって毛布が蹴り上げられる。中途半端に捲れ上がった毛布を千昭が完全に蹴落とした。  どうにか昂ぶっている性器を隠そうと太腿をぴったり閉じている俺に「白金の全部、俺たちに見せろよ」と普段よりもずっと甘い声で渋谷に囁かれる。  いつもはただ乱暴なくせにずるい、ずるすぎる。じわじわと耳まで赤くなるのを誤魔化そうとふるふる首を横に振ると、千昭に耳殻をかぷりと噛まれ、背筋に甘い痺れが走っている間に渋谷の手によって下着ごと引き下ろされてしまった。 「っや……、見るな、……ッ!」  ぶるん、と外気にさらされた性器ははしたなくもよだれをこぼしている。手で隠そうとしても渋谷に掴まれ、太腿で隠そうにも千昭に尻たぶを割り開かれて、どこもかしこも力が入らない。それなのに体は馬鹿みたいに火照ってしょうがない。  そもそも、どうしてこんなことになっている? なすがまま流されるなど王らしくないぞ、白金三千留。自分のペースで世界を回してこそ、王だ。俺ならばできる、大丈夫。なぜなら俺は王なのだから。  すぅー。深く息を吸い、吐く。丸裸にされようと、王としての品格を保たなければ。俺が真剣に深呼吸を繰り返しているからか、千昭と渋谷は手を止めた。スピーチの基本は、静かに、ゆっくりと――準備は整った、ようやく俺のターンだ。

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