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王を愛する男たち_06

「……っゆ、め……?」  はっと目を覚ますと、どろどろしていた体が嘘のように綺麗になり、いつもの白いバスローブを着ていた。渋谷と千昭にさんざん愛され、愛したのは夢だった――というわけではないようだ。声が馬鹿みたいに掠れているし、正面に渋谷、背後に千昭、ぴったりと俺にくっついて抱きついてきている。すやすや、スッキリした表情で眠っている二人が少し憎たらしく、すごく愛おしい。  ふに、渋谷の頬をつまむ。にやにやと口角が上がり、もそりと俺の肩口にすり寄ってくる。俺の青い鳥、可愛い。ふわふわの銀髪を撫でて、キスを落とした。  そういえば渋谷とは最後までできなかった。互いの性器を擦り合わせたくらいで、あまり気持ちいい思いをさせてあげられなかった気がする。今日はぜったいにもう無理だけど、今度は好きにさせてあげよう。  渋谷の背中に腕を回すと「……ミチル……」と甘く掠れた千昭の声が耳元で響いて、背筋がぞくぞく震え上がった。色っぽい声で、寝言で、名前を呼ばれただけで顔が熱くなる。声フェチだとは思わないけれど、千昭の声は好きだ。音速エアラインのファンでも、「千昭の声ってセクシーでぞくぞくするよね、あの冷たい眼差しにぴったり!」とよく騒いでいる。このルビーの瞳のどこが冷たいんだか。いつだって、灼熱のようだ。 「おやすみ、俺様が愛する男たち」  渋谷の背中に回していた片腕を、俺の腰に回る千昭の腕に添える。これなら二人をまとめて愛しているだろうと微笑んで、ふたたび眠りについた。 「しーろーかーねー、起きろよー」  ゆさゆさ、体を揺すられて億劫ながらも目を開ける。渋谷は無邪気な子どものように笑っている。なにか企んでいるのか? 勘繰りたくなるほどの笑顔。  もう少し寝かせてくれ、俺は体育会系の渋谷と違ってそこまで朝に強くないぞ。 「っん、ンん……ッ、あさから元気だな、しぶやは」  渋谷の首に腕を回して、胸元に抱き寄せる。大人しく寝ろの意味を込めたはずなのに、渋谷にはちっとも伝わらない。昨日さんざん弄られぷっくり腫れ上がっている突起にちゅうちゅう甘く吸いついてくる。  お前は赤ん坊か。小さく笑い、天然パーマなのだろうふわふわしたやわらかい渋谷の銀髪を指に絡めていると、突起を咥えながら渋谷は視線を俺に向けて来た。 「バスケ部エースなめんなよ、今からよゆーで一発決められっし、その後朝練もいける――けど、我慢してやるよ、白金のために。腰大丈夫なわけ? 立てんの? 学校でお姫様抱っこしてやろうか」 「っふ、……ッ、俺様を、誰だと思っているんだ? 百花の王だぞ、朝からだって、余裕だ……ッ?!」  俺の『余裕』を待っていたとばかりに、渋谷は俺に覆い被さる。お世辞にも頭が良いとは言えない渋谷だが、さすが百花を誇るバスケ部のエース。相手を誘導し、自分のペースへと持っていくのはお手の物な勝負師だ。  ピトリ。秘部に怒張した渋谷の性器を押し充てられるだけで、ひくひくと中が蠢いた。  あ、やめろ、俺の体馬鹿なのか。そんなことしたら、渋谷を喜ばせるだけだ。  チラリと渋谷を見上げる。すっかりご機嫌な笑みを浮かべ「やっらしー、白金も準備万端じゃねーか、チアキが起きねーように、静かにしとけよ」耳元でいやらしく囁いてきた。  静かにしとけ、だと? 静かにしてほしいのなら、ソレを今すぐしまってほしいものだな!  ぬちゅぬちゅッ。渋谷の亀頭が何度も秘部をノックする。固く閉ざしていた其処は、執拗に押され、擦りつけられているうちに、つぷと音を立てて亀頭を咥えこんでいた。 「ふ、ぅ……んンんッ……!」  みちみち、渋谷の性器がことさらゆっくりと中へ押し入って来る。まるで拷問だ。これならば一気に貫かれたほうがいっそマシかもしれない。じわりじわりと快感の波が押し寄せ、視界が涙でぐらぐら滲む。渋谷の大きな唇が楽しげに微笑んでいることだけはよくわかった。  はやく、たのむからはやく楽にしてくれ。 「っしぶや、ぁ、……っはや、く、……ッ」  はやくしてくれないと、腰がゆさゆさ勝手に揺れて、渋谷の熱い昂りを奥まで埋め込んでしまいそうだ。  はやくと言っているのに、渋谷は腰を進めるのをぴたりと止める。渋谷の性器は痛いほど張り詰めているのに、どうして。 「なあ白金、お前は俺がほしいわけ? それとも、ちんぽがほしいの。どっち」  は? なにを言っているんだ、と目を丸める。  だけど、真剣さと不安がないまぜになった渋谷の黒い瞳に見つめられたら、俺も自然と真剣に応えたくなる。こういう時に恥じらいなどいらない、必要なのは渋谷への思いただひとつ。 「俺様が誰のものでもほしがる淫乱に見えるのか? 俺様がほしいのは渋谷だ。だから、渋谷は難しいことを考えずにただ俺様の寵愛を受けておけばいい。俺様の寵愛は渋谷と千昭だけのものだ、しっかりその頭に刻み込めよ」  わかったか? ゆるく口角を上げ、渋谷の腕を引き寄せて唇を啄ばんだ。  渋谷の顔がみるみる赤く染まり、ああ、俺の青い鳥可愛いなと微笑む。 「わかった、すっげーわかったけど、余裕こいてんのも今のうちだぜ王様。俺だって王様をとことん愛してやるからさ、せいぜい溺れて窒息しねえようにな!」 「お前は誰に言っている? 俺様は百花の王だ、ッ――――っっん、あぁあッ!!」  ドチュッ! 静かにしておけとはいったいなんだったのか、張本人の渋谷が激しく腰を打ち立てて最奥まで押し入ってきた。  はやく楽にしてほしいと思ったけれど、渋谷は俺を楽にしてくれるつもりはさらさらなさそうだ。俺が声を上げるたびに、渋谷はどこまでも楽しげに口角を上げる。 「ふ、ぅ――ッ……、っんなに、ごんごん、する、なぁ、ッ……っひ、あっぁあ……ッ!!」  千昭が起きてしまう、なんとか堪えなければと唇を噛み締めるほどにゴンゴンと奥を乱暴にノックしてくる。ひどく容赦がない攻め方なのに、とろりと性器からよだれが垂れ始めた。  こんなの俺の体じゃない、ちがう、ふるふる首を横に振り、否定する俺に追い打ちをかけるように渋谷は俺の両腕を強く引っ張り、いっそう奥を突き立てる。刹那、視界が真っ白の闇に覆われ、絶頂に上りつめていた。 「ッッ白金、ココだけでイくとか可愛すぎ、つーか、マジ締めすぎだろ、ヨすぎて、もってかれそー、だわ!」  ずくんと質量を増した渋谷の性器にキツく吸いついてしまう自らの体をどうにか制御しようと、肩で呼吸を繰り返していると、渋谷も苦しげに熱が孕んだ吐息をもらしていた。  締めたくて締めているわけじゃない、気持ちがすぎて、キュンキュンと中が疼いてしまうのだ。こういう時、どうやったら緩められるのか、経験不足の俺にはさっぱりわからない。いっそう離すまいと吸いついてしまうほど、コントロールができていない。 「は、ぁ……はッ――あっ、まって、しぶや、まて、っ……っ!」  苦しげにしている渋谷を見てなんとか緩めようと深く呼吸をした瞬間、渋谷がピストンを早めてきた。はっ、はっ、獣じみた渋谷の吐息が、ぽたぽた髪から滴る汗が体に這い、ふるりと快感が走る。  あ、あ、これじゃあ本当に渋谷の愛で窒息しそうだ。だけど、受け止めてみせると決めた。二人の愛から逃げず、二人へ愛を注ぐと――毎日こんな風に愛されたら、すぐに溺れ死んでしまう。セックス以外の愛情表現を探さなければ。どこまでもふわふわとぼんやりした頭を焼き尽くすように、奥へと熱を注がれた。

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