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王を愛する男たち_07

「あーー……ぜんぜんおさまんねー、もう一回シよ「いいわけないよね、渋谷くんなにしてるかな」  イったばかりなのにとどまることのない渋谷の昂りに絶句していると、地を這う低い声が聞こえる。はっとして視線を声の主――千昭に向けると、ものすごく笑顔を浮かべているからいっそ恐ろしい。 「ナニってナニだけど? チアキは白金に挿れたのに、俺は昨日挿れられなかっただろ。だからだよ!」 「それなら俺も昨日は一回で我慢したんだから、きみも一回で我慢するべきだよね」  俺の中に挿れたまま喧嘩を始めないでほしいんだが!  すぅーと息を吸い、なんとか快感を分散させながら「……っとりあえず、抜いてくれない、か」と蚊の鳴くような声で囁いた。  バチバチ火花を散らしていた二人の視線がいっせいに俺へ向く。欲で濡れた黒い瞳、怒りが滲んでいるのに懸命に微笑む赤い瞳、二人の瞳は対照的だ。 「……いますぐ抜かない場合は、一ヶ月禁止にする」 「抜きますいますぐ抜きます!」 「っんん、ッ! ……は、ぁ……っ」  ちゅぽんっ、渋谷のモノが勢いよく抜かれた衝撃で秘部が切なげにヒクつく。「……うっっわ、エッッロ」ごくりと渋谷が喉を鳴らす音が聞こえ、思わず眉根を寄せて静かに睨む。とろとろ、中から渋谷の熱が滴り落ちてふるりと体を震わせると、千昭に姫抱きされた。 「ミチルの指じゃ奥まで届かないでしょ、俺が中洗ってあげる」 「……き、きのうも、千昭が洗ってくれたのか」 「もちろん。意識を失っていても、ミチルの中が俺の指を離したくないって甘く吸いついてきて最高にえっちだったよ」 「っっば、ばか、そういうことを、言うな、……っん」  千昭の胸を軽く叩くと、ルビーの瞳が和らいで甘く唇に吸いつかれた。  朝から渋谷と千昭のせいですっかり頭がとろけている。学校に着くまでには王らしさを取り戻さなければ。 「……千昭、渋谷」  すぅー、はぁー、息を吸い吐いて、二人の名前を呼ぶ。「どうしたのミチル」「なんだよ白金」千昭は穏やかに微笑んで、渋谷はベッドから立ち上がり俺のほうへと歩み寄ってくる。 「俺様は一人の男である前に王だ。公共の場ではいっさいその顔はださん。二人の前でだけ、特別に愛情を注ぐ。お前たちにもそうしろとは強いることはしない。お前たちは好きなように、したいようにしろ。だが、俺様は公共の場ではお前たちの愛情に応えることはできない――それでも、俺様の男でいたいと思えるか」  千昭と渋谷の顎に人差し指を這わせ、ツンと突く。  俺が王であるための傲慢な命令。非情なことを言っていると自覚はしているが、眉を下げたりしてはいけない。俺は王なのだ。民を不安にさせないために、誰よりも強くあらなければならない。 「二人きりないしは三人の時は、冷たくした分の愛情をたっぷり注いでくれるんでしょ? それならなにも問題ないよね――俺はいついかなる時もミチルに忠誠を、愛を誓うよ。この心はミチルだけのものだ、だから俺を王様の男にしてよ」  千昭の唇に人差し指を軽く吸われ、ゆっくり手の甲に口づけを落とされる。お前はいつだって俺に忠誠を、愛を誓ってくれている。俺もその思いに応えるために、千昭との出会いを思い出さなければいけない。千昭の首に腕を回し、ぎゅっと抱きしめ「……ありがとう、愛しているぞ千昭」と囁いた。ほんの少し泣きそうな声になっていたけれど、千昭は気づかないふりをして今度は髪にキスをくれた。 「白金、チアキばっか構ってねーでこっち向けよ」  ぐいっと肩を掴まれ、一瞬よろけるも、千昭がしっかり抱き上げてくれているからバランスを崩すことなく、首だけ渋谷のほうへ向き直る。  あ、拗ねている。千昭ばかりを構っていると思い込んであからさまに眉を下げてしょんぼりしている。さっきまであれほど愛し合っていたのに、どうしてそんな顔をするのだろうか。可愛いやつめ。 「渋谷、お前はどうなんだ。俺様に愛を誓えるか」  右腕は千昭の首に回したまま、左手で渋谷の顎を掴む。さっきまで拗ねた顔を見せていた渋谷にすっかり笑顔が戻り、左手の薬指にちゅっとキスをされた。渋谷には似合わないどこまでも気障な仕草だ。 「当たり前だろ。一番が白金、二番がバスケ、三番はセックス、あー、セックスはもう白金しか抱きたくねーわけだし、けっきょく、俺の頭はお前でいっぱいだわ、もう他にさける容量ねえ。それに、学校で王様らしく気高く振舞っているお前が、ベッドの上ではとろとろになっちゃうことを知っているのが俺たちだけとか最高じゃん――ぜってー、お前のこと思い出すからさ、待っててくれよ、俺たちの王様」  どうしても品のないことを言わないと気がすまないのだろうな、この男は。羞恥心で頬が赤く染まるのを誤魔化すように渋谷をぐいっと引き寄せ、厚ぼったい唇に吸いついた。 「渋谷が俺様を思い出してくれることを期待しているぞ。学校では盛るなよ」  最上級の微笑みを向けると、渋谷が「あー……その顔反則」と小さく呟いた後「でも、それは約束できねーわ!」と開き直る。ここまでくるといっそ清々しい。 「渋谷くんを監視するために百花に通うしかないな」 「千昭は真面目にバンド活動をしろ」 「バンド? え、チアキってバンドマン? マジ? 運転手じゃねーの?」 「……お前らは自己紹介からやり直すべきだな」  ほら、とっととやり直せ。  二人を交互に見つめるもとい睨む。二人は少し緊張したように、だけど火花を散らす素ぶりはもうなかった。 「ミチルの運転手兼音速エアラインのベース担当、目黒千昭です。本当は今すぐにでも俺だけの王様にしたいけど、いろんなものを抱えている王様を俺一人で支えられるとは思えない。だから渋谷くん――アユ、俺と一緒にミチルを支えよう。俺にないものをきみは持っているし、きみにないものを俺は持っている。だから、俺たち二人がミチルのそばにいたら、ミチルはきっと無敵だ」  俺を泣かせにかかっているのか。ずるいぞ。  泣くものかと唇を噛みしめ、千昭の胸元に顔を埋める。ふっと千昭の笑い声が聞こえ、ますます顔を上げられそうにない。 「あー……そーいうしっかりしてるとこ、マジ社会人と学生の差って感じしてずりーわ。俺はバスケ部エース、百花の三年、渋谷歩六。ハイパーノンケで女好きだったのに、白金の可愛さにやられてすっかり落ちてた。俺、まともな恋愛なんてしてこなかったけどよ、これは一世一代の恋だってわかる。だから、白金を無敵の王様にするために、三人で手を組むとするか。これからよろしく!」  ガバッと渋谷は千昭ごと抱きしめる。驚いて顔を上げると「こういうところ、まったく敵わないな」千昭が無邪気に笑っていた。  いつか、五喜が「二人が揃うと無敵」だと言った。それならば、三人揃えばハイパー無敵と言ったところだろうか。どう考えても、ふつうの恋愛ではない。だけど、俺にはこの道しかない。この道を選んだことを後悔したくない。この道を選んでよかったと誇りたい。 「この道を選んでよかったと思える王になる。だから、俺様のそばにいてくれ」  千昭の頬へ、渋谷の頬へ、キスを送る。二人は顔を見合わせると「おう」「Yes, Your Majesty.」承諾するように微笑んで、二人同時に俺の頬へキスをくれた。

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