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まさか裕介が、自分を探しに来るとは思ってもみなかった。
いつもどおり、キミヨに客だと言われて春夜が部屋に行くと、スーツ姿の裕介の姿がそこにあったのだ。五年ぶりの再会に、春夜は何の感慨も沸かなかった。それでもさすがに、戸惑いは隠せない。
凍りついたように動けなくなっていた春夜に「おい、客をほったらかしか」と言って裕介は口元を歪ませた。
お金を払っている以上は、客であることには変わりない。春夜はぎこちない愛想笑いを浮かべて部屋に入った。
「隣の部屋へ」
そう言って、両開きの襖を開けると裕介を中へと誘う。
薄暗い部屋の正面には、二脚敷かれている真紅の羽毛布団。淡いオレンジ色の光を放つ行灯 。左手にある内風呂に続く障子には、伸びた影が映り込んでいる。
「湯はこちらに」
春夜は淡々とした口調で告げる。裕介から上着を受け取り、タオルと浴衣を手渡す。
「なんの躊躇 もないんだな」
そう言い残して裕介は、障子を開けて中へ入っていく。
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