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 春夜はその姿を見送ると淡々と帯を解き、長着を肩から滑らせる。白い長襦袢姿になると、枕元にある小さな和箪笥からチューブを取り出した。  いつもどおりにやればいい。相手はもう、義理の兄でも何でもない。縁は切った。今はただの客で、自分の孤独を埋める存在。  余計な考えを起こさないようにと、春夜はいつも以上に丹念に後孔を解していく。全く熱を持たない体は、冷めた心を表しているように沈黙だった。  春夜が準備を終えると、裕介が部屋に浴衣姿で現れた。 「へぇー。さすがだな。客が風呂に行っている間に、準備しておくってわけか」  関心しているような口調で、裕介が布団に正座していた春夜の正面に立つ。 「ほら、さっさとしろよ」  裕介が腰を突き出し、春夜の視界が浴衣の青に染まる。  春夜は無表情で裕介の浴衣の帯を解き、沈黙している性器に唇を寄せた。何度も目にした光景に、忌々しい記憶が嫌でも蘇る。  春夜が裕介のいる家に引き取られたのは、母がいなくなってから間もなくしてからだった。小学校を無断欠席していた春夜を不審に思った担任が、家に訪れて発覚した。  食事も睡眠もまともにとっていなかった春夜は憔悴しきっていて、元々華奢な体は骨が浮き出ていた。あと少し発見が遅れていたら死んでいたかもしれない。でもその方が良かったのだ。

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