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「上級生にもその手を使った。親と教師に報告するって、書いた手紙を写真と一緒に下駄箱に入れたんだ。高校受験を控えたやつらもいたし、こんなことが明るみに出たら将来に差し支えるだろう」
「っ……はぁっ……」
裕介が腰を引き、春夜の体を反転させ仰向けで押し倒される。
「高校でもお前に目につけてきた虫は追い払ってやっただろう。それなのになんで逃げたんだ?」
「ッ……逃げたんじゃない」
再び腰を突き上げられ、春夜の体が震えだす。目の前に迫った男は、要領を得ないと言った表情で顔を顰めている。
整った顔をしているのに、義理とはいえ弟の体を貪る姿は相変わらず低劣だった。
「もう用は済んだから。対価分は相手にしたでしょ」
揺さぶられていた動きが、ぴたりと止まる。
「お前……」
上体を起こした裕介の目には怒りが滲んでいる。春夜は笑み浮かべた。
「情でも湧いたと思ったの? そんなわけないじゃん。僕はただ、なんの利益もないのに自分が損するのは嫌だっただけ。だから裕介の要求を飲んだだけで――」
強い衝撃と痛みと共に、春夜の視界が右に逸れる。じんじんと痛みだす頬に、叩かれたのだとわかった。
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