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「すみません。お見苦しいところを……参りましょう」  そう言って、春夜は裕介の腕を振り払う。 「お、おい! 話は終わってない」  慌てた裕介が、大声で喚き出す。何事かと周囲に人が集まりだした。 「社会人なら、マナーぐらいわきまえろ。ここは公共の場だ。これ以上、騒ぎ立てるなら警察呼ぶからな」  松原はそう言って、春夜を守るように前に出た。 「……ふざけやがって」  裕介は悔しげに呻いた。立ち去り際「春夜、逃げられると思うなよ」と吐き捨て、二人に背を向けた。  駅に向かって遠のいていく背を、春夜は忌々しげに見つめる。裕介はまた店に来るだろう。どうしてそこまで自分に執着するのか分からないが、厄介なことになったの確かだ。このままでは、あの場所にはいられなくなってしまうかもしれない。 「大丈夫か?」  ぼんやりと立ち尽くす春夜に、松原が「血が出てる」と言ってハンカチを差し出してきた。 「……どうして」  春夜は受け取らずに、青のストライプ柄のハンカチをじっと見つめた。 「僕なんかを助けたんですか」 「助けないほうが良かったのか?」  淡々とした口調で、松原が問い返す。

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