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「狭いところですみません」  春夜が座布団をすすめると、松原が腰を下ろした。居心地悪そうに、顔を顰めている。  春夜が「ビールでいいですか?」と言うと、松原は少し考えた末「ああ」と短く返事をした。  春夜は台所に行き、大型冷蔵庫からビール瓶を取り出す。食器棚から綺麗に磨かれたグラスを手に取る。盆に載せた時、ふといつも出す肴がないことに気がついた。仕方なく、春夜は自分が昼に作っておいた筑前煮を小鉢に盛り付けた。  盆を片手に部屋に戻ると、松原は周囲に彷徨わせていた視線を春夜に向けた。背広を脱ぐ様子もなく、一刻も早くここを出たいといった雰囲気だ。 「すみません。この場所が嫌いだと言っていたのに、無理矢理連れてきてしまって」  春夜は盆をちゃぶ台に置き、着物の袂を片手で押さえながら松原の前に並べていく。 「いや……ついてきたのは俺の方だ」  松原がグラスを取ったことにホッと胸をなで下ろし、春夜は隣に腰掛けてビールを注いだ。 「……さっきと雰囲気が違うな」 「えっ」 「いや、なんでもない」  そう言って、松原はグラスに口をつける。

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