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「お前はどうなんだよ。浮いた話を聞かないけれど、総務の安原さんと別れて以来なんじゃないのか」  斉木が枝豆の殻を松原に向けて、問いかける。  松原は三年ほど前に、同じ会社の総務課の女性と付き合っていたことがあった。でも半年もしないうちに別れていた。 「そういえばそうだ」 「魚の方が大事だって理由で別れたって……前代未聞だから」 「魚じゃないベタだ。魚、魚言うけどな、魚だって種類があって、俺が飼っているのは――」 「わかった、わかったから。俺はそんなことを聞きたいわけじゃない」  長くなると察したのか、斉木が手を振って松原の暴走を止める。口を噤んだ松原は、どう話せば良いか分からず眉間に皺を寄せた。 「顔が怖い。そんなんじゃあ、いつまで経っても彼女ができないぞ。気になる人とかいないのか?」 「……気になる人」  ふと思い浮かんだハルヤの顔に、松原は決まり悪くビールを飲み干していく。 「その様子だと……いるんだな」  斉木がニタニタしながら、だし巻き卵を箸で掴む。本題に触れたことで、松原は背を押されたように口火を切った。

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