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「おまえの思っているのとは、違うかもしれないが――」  そう言って松原はハルヤとの出会いから、気づいたら彼を助けてしまったことなど、自分の漠然とした気持ちを掻い摘んで話していく。  普段はうるさいぐらい問い詰めてくる斉木は、終始口を閉ざしていた。やたら真剣に話を聞く斉木に居心地の悪さを感じながらも、話し終えると少しだけ気が軽くなったように思えた。 「それは恋だな」 「えっ?」 「恋だよ、恋。大好きな魚の方じゃないぞ」  斉木が冗談を交えたことで、少しだけ張っていた緊張の糸が緩む。 「恋って……だって相手は男で、店の人間だ。ありえない」  そう言いつつも、心臓はおかしいぐらい暴れていた。 「恋に身分も性別も関係ないってよく言うじゃないか。何をそんなに悩む必要があるんだよ」 「……俺の両親。それが原因で離婚してるんだよ」  それとなく言ったつもりが、絡みつくような嫌悪が胸に押し寄せる。  斉木も驚いたように目を見開いた。 「それ……初耳」 「今まで誰にも、言ったことがなかったからな」  言う必要性もないし、言ったところで何かが変わるわけでもない。そう思って、今まで口にしたことがなかった。

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