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「そうかもな……でも当事者はそう都合よく解釈できないんだろう。毎日のように、あんたは父さんみたいに、店の女なんかに入れ込んだりしないでよねって言われてきた」 「女って他の物に夢中なのが許せないんだろうな。だから魚に夢中なお前はいつもフラれちゃうんだろ」  斉木が悪戯っぽい笑みを浮かべる。運ばれてきたビールで喉を潤し、松原は余計なお世話だという言葉も一緒に飲み込んだ。 「思うんだけどさ……これって、凄いことなんじゃないのか」  不意に思いついたかのように、斉木が首をかしげる。 「凄いこと?」 「だって、嫌悪している対象のはずなのに、気になって仕方ないんだろう? それに信用していない人間だったら、いくら魚を見せるからって、家に来いとは言わないんじゃないのか」  斉木の問いかけに、松原は黙り込む。確かに自分はハルヤにうちに来るかと訊ねた。ベタの話で警戒心が緩んだということもあるかもしれない。  だからといって全く素性を知らない人間、ましてや今まで理解できなかった店の人間を、安々と自分の住居に招こうと思うだろうか。 「お前は真面目だし、悩むのはわかるよ。でもさ、恋愛って理屈じゃないと思うんだ」  斉木が煙草を口に咥えると、吸っても良いかと目で訴えかけてくる。松原は頷いた。

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