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 これで最後になるかもしれないのだから、金魚を引き受けるのも悪くない。春夜はそう自分に言い聞かせ、自室の襖を開く。 「散らかっていてすみません」  ベタの飼育本が目にとまり、春夜は慌ててちゃぶ台の上を片付けていく。内心は焦りで、手が微かに震えていた。これではまるで、自分が松原の話を気にかけているように映ってしまう。  寒さのせいか緊張のせいか、手元が狂い本がバサリと床に落ちる。  松原が視線を本に落とし、驚いた表情を浮かべた。慌てて拾い上げるも、弁解のしようもなく春夜は唇を噛み締める。 「その本、うちにもある」  そう言って松原は少し口元を緩め、紙袋から慎重に金魚の入った袋を取り出した。  ちゃぶ台の上に乗せられると、白と赤の模様を描いた金魚が、驚いたように狭い空間を縦横無尽に泳ぎ回った。お祭りで手に入れた小さな金魚よりも身体のサイズが倍近く大きい。 「二リットルのペットボトルとバケツに、水を入れてきてくれ」  松原から言われて、春夜は頷くと部屋を出る。ここまで本格的に準備したのは初めてで、内心は驚いていた。それでも余計なことは口にはせずに、台所に向かう。

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