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松原は春夜の為に、裕介から守ってくれた。
この場所が嫌いなのに、こうして足を運んでくれている。それも金魚まで手土産にして。こちらが好意を抱いてしまうのは、あり得なくはない話だ。
現に春夜は言葉とは裏腹に、胸が張り裂けそうなほどに心臓が高鳴っていた。
「……君は俺のことを嫌いか?」
切実な松原の声音に、春夜は唇を引き結ぶ。
嫌いなはずがない。自分だって、本心を押し殺そうと必死なのだから――でもそれを言ってしまって、傷つくのが怖い。また置いていかれてしまうのは嫌だった。
黙り込む春夜に松原は、諦めたように小さく息を吐いた。
「……そうだな。そんなに会ってもないし、君を抱きもしない男の言うことなんて信用できないよな。悪かった……」
自嘲気味に緩く笑み浮かべる松原に、春夜は危うく、違うと首を横に振りかけ留まった。
「君にとっては迷惑な話だったな。でも今日は、君を抱いても良いか?」
松原の問いかけに、春夜は小さく頷いた。
これで本当に彼と二度と会えなくなるかもしれない。でもこの選択はきっと、間違ってはいないはずだ。ここに縛られている自分は、松原のようには昼の世界では生きてはいけないのだから。
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