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「それは俺を気遣って言っているのか?」  松原の問いに、春夜は力なく顔を上げた。 「だったら見当違いだ。今の話を聞いたところで、俺の意思は変わらない」  松原の真っ直ぐな言葉と視線。予想外の反応に、酷く狼狽えた。 「どうして……そこまで僕を……」 「好きだから以外に理由はない」  居たたまれなさに、春夜は俯いた。その先に映っている自分の拳や膝が、水中にいるみたいに揺れ動いている。 「それに君は何も悪くない。中学生でそんな手段を取るにまで至ったのは、君がそれだけ追い詰められていたからなんだろう? もしくは、あの男が君を脅したんじゃないのか?」  松原が不愉快そうに眉を顰め、吐き出すように言った。  春夜は肯定も否定もできず、ただ俯いたままで顔を上げることもできなかった。  自分はこんなにも弱かっただろうか。祐介や厄介な客相手でも、今までは毅然と振る舞うこともできていたはずだ。それなのに今は、言葉を発するどころか、松原の顔すらまともに見れない自分がいる。 「そもそも嫌がる君を、店から無理矢理連れ出すことからしておかしかったんだ。あれからその男はここに来ているのか?」  春夜は力なく頷いた。否定したところで、松原が通い続けてしまえば、いつかはバレてしまう。

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