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 松原が握っているハルヤの手は、お酒の余韻からか少し熱を帯びていた。  話すことを躊躇っているハルヤを促すように手をぎゅっと握ると、意を決したようにハルヤが話し出す。 「僕の不注意で祐介に、あなたの名刺が渡ってしまったんです。破り捨ててましたが、あなたの名前や企業は知られてしまいました。だから――」 「そんなのかまわない」  たかがそんなことでハルヤはあの男に身を捧げていたのかと思うと、松原はやるせなさが込み上げた。 「君がそのことで彼の言いなりになっているのなら、もうそんなことはする必要はない」 「それはできません。あの男はどこまでも卑劣なんです。僕が拒めばあなたの会社に行ってこの場所に来ている写真をばらまくか、あなたを脅しにいくかもしれない。彼はそういうことを平気でやる男なんです」  目に涙を溜め、ハルヤは青ざめた顔で取り乱した。 「来れるものなら来ればいい。バラしたいならバラせばいい。俺は間違ったことは何もしていない。違うか? そんなことで地位が揺らぐような会社なら、先は見えている。それに俺は、周囲から信用されないような仕事振りをしてきたつもりはない」  宥めるように重ねている手を強く握った。  それでもハルヤは悄然(しょうぜん)とした様子で俯き続けている。

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