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「僕なんかのために……どうして――」  震える声に視線をハルヤに向けると、大粒の涙を目から零していた。ぽたぽたと松原の手の甲に落ちる感触が、さっきよりも増していく。 「僕は……あなたが来ても断るように、キミヨさんに言っていたんです。あなたが来なければ、祐介だって手出しできないと思ったから……」  ぽつりぽつりと、ハルヤの口から告げられる真実。  松原は堪らず、ハルヤを抱き寄せた。 「君は俺を嫌いで、突き放そうとしたわけじゃなかったんだな」  沈黙するハルヤが小さく頷いたのを肩越しに感じ、松原は体を離すなりハルヤに顔を寄せた。  柔らかな唇が触れ合う。ハルヤが松原の首筋に腕を回したことで、心地よい負荷がかかった。  合わさった唇の間から舌を割り込ませると、ハルヤの方から舌に吸い付いてくる。  迫り上がる焦燥感に、松原はハルヤの帯に手をかける。それを制するように、ハルヤの手が松原の腕に触れた。 「嫌か?」  僅かに上ずった声で、松原は問いかける。  ハルヤは首を横に振り「二階に行きましょう」と言って、ハルヤの方から軽く唇を触れ合わせてきた。

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