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重だるい瞼を開けると、視界に広がる木目調の汚れた天井。柔らかくずっしりとした感触が全身を覆い、布団に寝かされているのだと分かった。
春夜はゆっくりと上体を起こしていく。
行灯 の淡い光が真紅の布団を艶めかしく照らしている。ここはさっきの部屋の寝室のようだった。
喉の鈍い痛みに、喉元を指でなぞった。
まさか殺しにかかってくるとは、思ってもみなかった。自分の迂闊さに、心底げんなりした。
不意に襖が開き、キミヨが顔を出す。
「起きたのかい?」
春夜が頷くと、キミヨが中に入るなり襖を後ろ手に閉めた。
「祐介は?」
声を出した途端、鈍い痛みが喉に走り顔を顰める。
「警察を呼ぶと言ったら、尻尾巻いて帰ってたよ。ちっさい男だねぇ。今度来
たら会社にも連絡を入れると言ったから、もうここには来ないはずだよ」
キミヨが仏頂面で淡々と言った。
春夜の目の前に腰掛けるなり、「それより、あんたねぇ」と言って険しい表情をした。
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