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ハルヤが店を辞め、自分の元にくるつもりはない。要はそういうことなのだろう。
「君は俺の所に来るつもりはないのか?」
ハルヤは俯いたまま、小さく頷く。
「……そうか」
無理強いはするつもりはないと、最初から決めていた。彼がここを出て、どうやって生きていくのか。気にならないわけじゃない。でもそれが、彼の意思なのであれば止める権利は自分にはない。
「分かった。金魚は俺が責任もって連れて帰る」
棚に近づくと、並べられていた本はすっかりなくなっていた。本当にここを出るつもりだったのだ。キミヨが連絡してこなければ、ハルヤは黙ったまま、姿を消していたのかもしれない。胸がじくりと痛んだ。
金魚鉢の中で泳ぐ金魚が二匹。縦横無尽に泳ぎ回っている。健康状態も良好なのは、きちん管理していた証だった。
「綺麗だな。ちゃんと世話していたのがよく分かる」
買ったときよりも色艶が良く、光に反射した鱗が朱色に光っている。
「今までありがとう」
松原は振り返り、ハルヤの背に向かって言った。小刻みに震えている背を見ないふりした。
一緒に来て、傍に居て欲しい。そう言いたくとも、彼の意思に反して自分が出しゃばるわけにはいかない。
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