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「でも、僕は――」
「あんたは間違っている」
ハルヤの言葉を遮るように、キミヨが鋭く言い放つ。
「あんたは自分だけが、傷つくことを恐れてるだけだ。なにがこの人を幸せにできないだ。自惚れるのも大概にしな。あんたねぇ、この人はあんたのことを好きで一緒にいたいからってだけで、そう言ってくれているんだよ。他の誰でもない。あんただからそう言ってるんだ」
キミヨの視線が松原に向けられる。違うのかと聞かれているようだった。
「ああ。君だから俺は、来いって言ったんだ」
松原もキミヨの隣に腰を下ろす。悄然としているハルヤの様子に胸が詰まった。
「あんたが黙っていなくなったら、この人が悲しむとは思わなかったのかい? あんただって、辛い思いしてきたじゃないか。だからここで働いてきたんだろう」
皺の多いキミヨの手が、膝の上で固く握られている拳の上に重なった。
ハルヤが目を見開き、信じられないといった表情を浮かべる。
「あたしはね、あんたにはここじゃなくて、ちゃんとした場所で幸せになってもらいたいんだ」
「……キミヨさん」
ハルヤの口から嗚咽を溢し、止めどなく涙を溢れ出す。その肩をキミヨが優しく抱いた。
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