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 キミヨは寒いからと言って、玄関先での見送りだった。  ハルヤは深く頭を下げ「お世話になりました」と言って、寂しげな笑みを浮かべた。 「おせち、毎年ありがとう」 「何言ってんだい。余り物を押し付けただけだよ」  目元を伏せて別れを惜しむハルヤに対し、キミヨはやや投げやりに返している。照れ隠しなのだろう。さっさと行きなと言って、背を向けた。  もう一度ハルヤが頭を下げてから、二人で玄関の外に出る。  ハルヤは一旦立ち止まると振り返り、名残惜しそうに建物を仰ぎ見た。 「後悔してるのか?」  松原が問いかけると、ハルヤは静かに首を横に振った。 「いいえ。いずれにしろ、僕はずっとはここにはいられなかったと思います。この建物のように、僕だっていつかは老いていく。そしたら客だって離れていってしまうから」 「そうだな……でも俺は、死ぬまで君のそばにいるつもりだ」  ハルヤは何がおかしいのか、口元に手を当てて小さく笑った。

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