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9恋の始まり/出会い

 俺が中学三年の時、入学式のすぐ次の日だったと思う──  少し大き目の学ランを着た新入生の列の中にあいつを見つけた。  どうってことはない、数いる男子生徒の中の一人。野球でもしていたのか、坊主頭に少し日焼けした健康的な肌。そこら辺の奴らとなんら変わらないはずなのに、俺は不思議とそいつに目が釘付けになってしまった。  多分きっと、一目惚れ。  俺はもうこの時には自分の恋愛対象は同性なんだと自覚していた。女の子から告白をされても何も感じない。逆に男友達からふざけて肩を組まれたり、体を触られたりする事の方がよっぽどドキドキしていた。異性には感じない緊張感や高揚する気持ちの対象は、常に自分と同じ同性に向けられていた。  自分の事は分かっていたつもりだった。でも名前も知らない入学してきたばかりのその彼を見て、こんなにもときめいてる自分に少し焦ってしまった。何となく他人事のように自覚していた事が、今初めて確信に変わってしまった感覚。俺は人とは違うことは薄々わかっていていたけど、やっぱりそれは動揺するくらいには俺にとってショッキングなことだった。  学年も違うし、部活も違う。彼とは何の接点もなかったけど、唯一お互い運動部だったのもあり、放課後の部活動の時はグラウンドで彼の様子を盗み見る事を楽しみにしていた。  俺はテニス部、彼はサッカー部。彼がサッカー部の奴らに「高坂」と呼ばれているのを聞いて、名前を知る事が出来た。  高坂……  名前がわかったところで俺には話しかける勇気もなく月日は流れ、卒業を迎えた。  俺の淡い初恋はこうして終わったかのように見えたけど、高校でまた、まさかの再会をする事になった。  俺が高校三年の春、新入生のオリエンテーションの時に忘れもしない高坂の姿を見つけ、本当に涙が出そうになるくらい嬉しかった。高坂が、俺と同じ高校を受けて入学してきた! こんな偶然あるか? 俺はまだ、初恋を諦めなくてもいいんだ……そう思うと胸が高鳴った。  俺は高校に入ってからは中学でやっていたテニスもやめ、バイトをしたり友達と遊んだり、適当な女の子とデートしたり……なんとなく毎日を過ごしていた。女の子から告白もされ、嫌いじゃないから付き合う真似事もした。勿論恋愛対象は男だから、結局彼女は俺に対してつまらない男だと言い去っていく。嫌いじゃないけど好きでもない俺はそんな事を繰り返していたからすぐに「女誑し」と噂されるようになってしまった。  男が好きだから、なんてそんな事は口が裂けても言えないだろ? 言い訳もできず、面倒で少し投げやりになっていた。  そんな矢先に、俺は新入生の列に高坂を見つけたんだ。  これは絶対に運命だ! チャンスなんだ! 本気でそう思った。  中学の時は何も行動に移せなかったけど、今回は違う。何が何でも彼に近づきたい。せめて自分のことを認識してもらいたい。俺は頑張って調べ、俺の友達の弟が高坂と仲がいいという事を知ることになった。

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