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11 恋の始まり/恋愛対象
「マジかよ? 悠さんも男の方がいいの? 言ってみるもんだなぁ。俺さ、体育とかどうしてもカッコいい奴の方見ちゃうんだよね。ドキドキするし……こういうのって悠さんも同じ?」
俺も一緒だと打ち明けた途端に、陸也は楽しそうに話し出した。
きっとこういう話を友達ともしたかったのだろう……目がキラキラしてる陸也を見て嬉しくなった。そうだよな、ノンケの奴らとはこんな話はできないもんな。
俺もドキドキするよ、陸也を見ていると。でもそれは本人には言えなかった。
それからというもの、楽しそうに話す陸也の口から出るのは俺以外の男の話ばかりだった。きっと陸也の恋愛対象に俺は始めから入っていないのだろう。 俺はあくまでも同類の、単なる相談相手……そう思ったら少し心がチクっと痛んだ。
それでも俺は嬉しかった。
ニ人だけの秘密が持てた事で、俺はもう十分満足だった。
陸也はやたらと俺と遊びたがった。他の誰より気楽だったのだろう。俺も誘われれば素直に嬉しかったから、バイト以外のほとんどの日を陸也と過ごした。
陸也は俺の前で、俺以外のカッコいいと思う男の話をする。あの筋肉質な腕に抱きしめられたらどんな気持ちになるんだろう、とか、あいつはあんなに強面のくせに可愛い事言うんだぜ、とか。
陸也の話す男は、毎回決まった男ではなく違う男だった。
色々と聞いてるうちに気が付いた。もしかしたら陸也は単純に「恋愛対象」としてじゃなく、カッコいい同性の男に憧れているだけなのかもしれない。そう思い始めたら少し複雑な気持ちになった。でもそれならそれで、俺も諦めもつく。
「悠さんはさ、どんな男がタイプなの?」
俺の部屋でゲームをしてる時、突然そう聞かれ思わず手が止まる。
陸也の事が好きだけど、全く俺の事には興味を示さない陸也に気持ちを振り回され、正直しイライラも積もっていた。
否……
俺が勝手に陸也の事が好きで近付いたんだ。親しくなれるように俺がそう仕向けたんだ。
陸也は何も悪くない。
俺が陸也が憧れるようないい男になれていないだけ。
「あーぁ、悠さんヤられた! ぼんやりしてるから…… 」
俺がゲームの手を止めたから、テレビの画面には『ゲームオーバー』の文字が点滅していた。
「………… 」
遠くの方で陸也の声がする。コンティニューするのか、もうやめて別のゲームをするのか? 陸也が俺に聞いている。
俺はなんだか色々な事がどうでもよくなってしまった。
もういいや……
そう思ったら俺は行動に移していた。
「ごめん、陸也 」
キョトンとする陸也を押し倒し、俺は無理矢理その唇を奪った。
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