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12 恋の終わり/初恋の思い出
柔らかな唇……
ずっと触れたかった陸也の体。
目を見開いて驚いた表情を浮かべる陸也と目が合った。それでも俺は動揺する気持ちを奥へと押しやり、強引に陸也の中へ舌を捩込む。体を強張らせ俺の肩にしがみついてる陸也だけど、すぐに力が抜けて舐る舌を受け入れてくれた。
どれくらい長い事キスをしていたのだろうか。俺は夢中で陸也を抱きしめ、キスをしていた。
これが俺のファーストキスだった。
気まずい思いで陸也から離れ、俺は取り敢えず「ごめん」と謝った。思わずしてしまったことに動揺する。ごめんとしか言いようがない。
焦る俺とは裏腹に、頬を赤らめ恍惚の表情を浮かべた陸也はしばらく何も言わずに押し倒された状態のままぼんやりとしていた。
ああ、やってしまった……
どうしたものかと考えあぐねていると、不意に陸也が声に出してハハっと笑った。
「キスって気持ちがいいんだな」
俺を見て可愛くはにかむもんだから、俺はもう抑えがきかなくなった。もう一度陸也にキスをすると、今度は陸也の方から舌を差し出してくる。そのまま俺は陸也の下半身に手を伸ばすと、少しだけ固くなりズボンを押し上げているそれに触れた。
「あっ……」
ズボンの上から軽く握ると、驚くほど可愛い声を出す。お互い夢中になりながらキスをし、気がつけば下着も脱ぎ去り、触り合いながら射精した。他人に弄られイったのもこれが初めての経験だった。
お互いこういう事に興味が湧く年頃……相手はきっと誰でもよかったんだ。
こうしてまた、俺と陸也は秘密を共有することになった。それからは頻繁に、会えばニ人で抜き合いをしていた。
キスをして性的な行為はするけど、それ以上のことはしない。でも陸也と会う度、キスを重ねる度、俺の思いはどんどん膨れ上がっていく。思いは大きくなるのに、それを受け入れてくれる場所は存在しなかった。
そう、ここまでしても陸也が俺の方へ振り向くことはなかったから。
『俺たち、付き合おうか?』
そんな言葉を毎回飲み込む。そんな思いを胸の奥へ押し込み、あっという間に卒業シーズンを迎え、俺と陸也はそれっきり会わなくなった。
別れを惜しむこともなく、何にもなくあっさりとお別れ。思いを伝えようと思えばいくらでもチャンスはあったんだ。
でも俺には勇気が足りなかった。だって結果は目に見えていたから──
思いの人を遠くから見てときめいていた中学時代。
大好きな人と初めての経験を共有できた高校時代。
俺はそれで満足だった。
これが俺の「初恋」の思い出だ──
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