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23 ほろ酔い
純平君が絶賛しているだけあって、出された料理はどれも美味しかった。
「どうせ純平君が送ってくれるんだろ? 安心して飲めるじゃん」
お喋り上手な大将にそんな風に言われてしまい、俺はいい具合に飲まされてしまった。程よく賑やかな店内。周りも全く気にならない。カウンターでゆったりと調理しながら気さくに話しかけてくる大将も好感がもて、居心地が良かった。
「……うーん、ちょっと飲みすぎたな」
「大丈夫ですか?」
「俺もそもそもそんなに飲まないんだよ。酒が強いわけじゃない。全く、大将に上手く乗せられて飲んじゃったよ」
純平君が送ってくれるからと言って、気を良くして軽く酔っ払ってしまった。そんなつもりはなくても、浮かれてるのが丸わかりで恥ずかしかった。でも、安心してここまで飲んだのも久しぶりかもしれない。
俺は更に調子に乗り、酔いに任せて横に座る純平君の肩に頭を乗せる。
「酔ったぁ」
「……?! 」
純平君はビクッと肩を震わせ、慌てて俺の頭を手で退けた。
「ちょ、ちょっと、本当に大丈夫ですか? 大将! お水! お水ちょうだい!」
「………… 」
いやいや、そんなに慌てて押し退けなくてもいいんじゃないか。ここは冗談として笑って欲しかった。男同士だし、まさかそんな慌てるとは思わなく、少し傷付く。自分から構っておいて言えたことではないけど……これも全て酒のせいだ。
「はは、そんなに嫌がらなくてもいいでしょ。冗談だよ、純平君は真面目だね」
大袈裟なくらい声を出し笑いながら、純平君の顔を見る。思った以上に真っ赤になって照れている純平君と目が合い、こちらまで恥ずかしくなった。
「もう、からかわないでくださいよ……」
「ごめんね、ちょっとふざけただけだよ。でも楽しくてつい飲み過ぎちゃった」
お腹もいっぱいになり、大将から水をもらい会計を済ませる。純平君は「やっぱり俺が払います」なんて言い出したけど、そこは最初の約束通り割り勘で済ませた。
「ご馳走様でした」
ニ人で揃って店を出ると、外の風が頬にあたり気持ちが良かった。
でも……
冗談抜きで、少し酔ってしまったみたいで足元がふらついてしまう。
「………… 」
普段ならこんなときは体を預けて頼ってしまうところだけど、先程の純平君の反応を思い出し「それはやめとけ」と頭の中の声が忠告した。
それにしても、俺は陸也みたいに気心知れた奴と一緒の時しかこんなに酔ったりしないのに、自分でも意外だった。
「悠さん? もしかしてフラついてる?」
「ううん、そんな事ないよ、大丈夫」
咄嗟に俺は嘘をつく。
嘘をついたり、誤魔化したり……こんなのはいつもの事だ。
「悠さん、ほら、掴まっていいですから。危ないですよ」
そう言った純平君が俺に寄り添い、肘を出してきた。これは腕を組め……って事なのか?
「ほんと、大丈夫だよ。ありがとね」
俺は差し出された腕をポンポンと叩いてまた少しだけ離れて歩く。少し進んだところで、急にグッと抱き寄せられた。
「嘘ばっかり! フラついてますよ? 悠さん。駐車場まですぐですから、少しくらい頼ってください」
「あ、うん」
純平君の優しさに、勘違いをしそうになる。
この行動に深い意味は無い……単なる優しさでこうしてくれているんだ、それを素直に受け入れるんだ。
無駄にドキドキしちゃダメだよ。
俺は純平君に抱き寄せられながらそんな事を考えていた。
そう、わかってるんだ──
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