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73 いつもの調子の……

 思っていた通り、あれから純平君が店に来ることはなかった。  純平君が来なくなってからだいぶ過ぎ、今日は店も休みで俺は一人部屋でのんびりと過ごしていた。  簡単に昼を済ませ、テレビを見て寛いでいるとインターホンが鳴る。面倒だったのと、どうせ何かの勧誘かと思い無視しているともう一度インターホンが響いた。  連続で鳴らされるそれにイライラしながら仕方なく画面を覗くと、そこに見えたのは機嫌の良さそうな敦の姿だった。 「やっほ〜! 悠さん今日はお休みでしょ? 俺ね、連休なんだよ。デートしようぜ」  勝手気まま……  いつものちょっと強引な敦。 「なんで? 嫌だよ、お前と一緒だと目立つから……」 「うぅん、そう? ……嫌?」  部屋に上がりこんできた敦はソファに腰掛ける。 「そりゃ嫌だろ。歩けばサインくれだの写真撮ってくれだの……その度に敦の隣にいるこいつは誰だ?  って目で見られんだよ俺は」  敦と一緒の時は殆ど夜で昼間に二人で出歩いた事なんてないけど、夜の状態でそれなのだから昼間はきっともっと酷いだろう。  そんなの煩わしくてゴメンだ。  敦は俺が出してやったコーヒーを啜ると、怠そうに腕を上げて伸びをした。 「ん〜、じゃぁさ……お家デートにする? 悠さんせっかくの休みなんだし、俺が飯作ってやるよ。あ! 何か見たい映画とかある? レンタル行くし、なんでもするよ」  急に何を言い出すのか、敦の言動にちょっと戸惑う。そもそも「デート」とは何なのだろう。 「前に言ったじゃん、俺ともデートしてよって。忘れちゃった? ねえ、昼はもう食べた? まだなら作るし買い物にも行くよ」  さっき軽く食べたばかりだし、デートとかいって敦が俺の身の回りの事するのもおかしな話だ。 「昼はもう食べた……でも冷蔵庫の中、もうほぼ空だから買い物は行きたい、かな」 「じゃあ決定! どうする? メモでも書いてくれれば俺行くし。それとも一緒に行く?」 「………… 」  デートだと言っている敦に一人で買い物を頼むのも変だし、二人で出掛ける事にした── 「なんかさ、悠さんと真昼間に一緒に歩いてんの、なんか可笑しいね」  敦は一応変装なのか帽子をかぶり、伊達眼鏡をかけている。こうやって見るとまた雰囲気が違うんだな、と感心する。 「ん……? なに? 俺の顔になんか付いてる?」  思わずジッと見つめてしまい、敦に不思議がられてしまった。 「いや、別に。そういえば敦って料理なんかするの?」  さっき「俺が作るし」なんて言ってたのがちょっと意外で聞いてみたら、ドヤ顔で返されたからイラッとしてしまった。 「ちょっと悠さん、イラついてるでしょ。そんな顔しないでって。晩メシは俺がご馳走するからさっ」  スーパーに到着すると自らカートを引き「悠さんは何もしなくていいよ」と言いながら機嫌よく食品をカゴに放る。 「俺の一週間分の食料とさ、それ……お前がカゴに入れたやつも俺が払うのかよ」  見てるとワインやらチーズやら菓子やらアイスやら……俺に必要のないものもバンバン放ってる。 「へ? 何言ってんの? ここのは全部俺が奢るからさ、悠さんは気にしない気にしない」  なんで奢ってくれるのかわからないけど……まあ、敦がそう言うならいいかな。そう思いながら俺はお言葉に甘え必要な買い物を済ませた。

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