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74 お部屋デート
敦のペースで買い物を済ませ、今度はレンタルショップに寄り何本かDVDを借りる。ここ数年レンタルなんてしてないし、もちろん映画も観ていない。俺は特に興味もなく、スタスタと店内を進む敦の後ろを何となくついて歩いた。
「悠さんはさ、好きなジャンルとか今観たい映画とかある?」
振り向きざまに聞かれたけどすぐには頭に浮かばない。過去には観たい映画もあったような気もするけど、日々の生活に流されそんなことも記憶から消え去っていた。
「俺は別に……」
「じゃ、俺が観たいの借りてくね」
そう言った敦は次から次へと棚からDVDを手に取り、カウンターへ向かった。
「結構な荷物だなおい」
買い物の袋を二人で二つずつ持ち、敦はおまけにDVDも抱えている。
「ははっ! ほんと、なんか楽しいな」
怠い俺とは反対に、敦は帰り道もずっと楽しそうだった。
部屋に戻ると、買い出ししてきた荷物をキッチンのカウンターに広げる。
どんだけだよ……とため息が出るくらいの品物の量。一人で買い物に行くときの倍以上はあった。食材は勿論、酒やらお菓子やら、自分では買わないようなものもたくさんあってちょっと楽しい。
「凄い買ったな。なに? 夕飯なんかもほんとに敦に任せちゃっていいの?」
俺が聞くと、敦は袋から取り出した缶ビールをプシュっと開けた。
「おぅ! 旨いの作っから、悠さんゆっくりそれでも観ててよ」
指差された方を見るとさっき借りてきたDVDがテーブルの上に置いてある。袋の中身を見てみるとジャンルはバラバラだった。古い洋画、邦画、海外ドラマ……これは何故か途中から。お笑いまで入っている。特に見たいのもなかったから、お笑いのDVDをセットしてテレビをつけた。
「勝手に借りるよ」
キッチンから敦の声が飛んでくる。
勝手にすればいい……てか、なんで俺の家で敦が飯作ってんだろうな。
一人でDVDを見ていてもあまり面白くもなく、キッチンの方へ体を向けた。敦が思いの外、真面目な顔をして何かを作っているのを不思議な気持ちで眺めていた。
俺の視線に気がついた敦が笑いながら小首を傾げ、「どうした? もうちょっと待っててね」と笑顔を見せる。そして程なくして、器用に両手に皿を乗せた敦がリビングに戻ってきた。
「ジャーン! どう? 旨そうでしょ?」
一方の皿にはさっき買ってきたチーズが数種類綺麗に並べられ、もう一方はクラッカーにアボカドかな? 小皿に入ったディップがのっていた。
「ワイン呑まね?」
片手にワインも携えて、ソファに座る俺の隣にドスンと腰掛ける。
距離が近くてドキッとしながら、俺はさりげなく敦から離れるように座り直した。
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