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78 眠れない夜

 リビングのソファに窮屈そうに横になる敦に毛布を渡す。 「本当にここで寝るの?」 「……うん。明日は勝手に起きて勝手に出て行くから。悠さんは気にしないで寝ててね」  鼻のあたりまで毛布をかぶり、軽く目を瞑る敦。 「おやすみ」  電気を消しリビングから出て行こうとすると「悠さん……」と声をかけられ俺は振り返った。 「あのさ、ちょっとだけでいいからさ、えっと……俺に頑張れって言って。大丈夫だよって言ってくれる?」  子どもみたいな眼差しに頬が緩む。 「頑張れよ。お前なら大丈夫……おやすみ」  子どもかよって喉まで出かかったけど、ここは茶化しちゃいけないと思って言わなかった。  頑張れ──  俺は一人寝室へ戻る。  ベッドに横になるも、敦がリビングで寝てるのが気になってしまい、なかなか寝付けなかった。  おやすみと言ってから、どのくらい経っただろう……  本当に寝付けなくて、喉も乾いてしまったからしょうがなしにリビングへ入った。寝ている敦を起こさないように気をつけながらキッチンに行き、グラスにそっと水を汲む。 「………… 」  敦も結構な長身だ。あんなソファで寝かせてしまってやっぱり申し訳なく思った。  そう思いつつも、本心はどうだ?  人恋しい……  敦に触れてもらいたい……  でも別にセックスがしたいわけじゃないんだ。  そっとソファで眠る敦に近付く。  ソファの前に座り込み、寝ている敦の顔を見つめた。  起きてると生意気そうな顔が、眠っているとこうも穏やかで……綺麗。  派手な言動、生意気な口調、自信家。常に目立つ位置にいて社交家で友人も多い。敦のことを考えれば考えるほど、自分とは真逆だと気付かされる。 少しずり落ちている毛布を掛け直そうと手を伸ばすと、寝ていたはずの敦と目が合った。 「悠さん?……眠れない?」  敦の手が俺の手を捕まえる。  優しく包み込むように握られたその手を振り払うこともできたのに……敦の視線から逃れることだってできたのに……  敦の視線に捕まった俺は、自らもその手を掴んで「眠れない」と、そう呟いた。

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