79 / 107

79 ぬくもり

 結局、俺と敦は一緒にベッドに入った。  かつて陸也がそうしてくれたように、敦は俺を背後から抱きしめる。  久しぶりの人のぬくもり……  人肌恋しい、愛されたい……そう思い実際こうやって優しく抱きしめてもらっても、俺は穏やかな気持ちにはなれなかった。  俺は陸也しか知らないから…… 「……ごめん悠さん。嫌だったら離れるから」  すぐ背後から敦が囁く。  ほんの少しかかる吐息にさえ意識がいってしまい、どうしようもなく胸が騒ついた。 「ううん……大丈夫」  ドキドキが伝わってしまいそうで、俺は小さくそう言って身を縮める。  俺の胸元に優しくまわされている敦の腕が、微かに震えた。 「悠さん……俺、我慢できる自信、ない。どうしよう……」  首の後ろに敦の声がかかる。  一緒にベッドに入った時点でこうなる事は想像できた。敦が俺に好意を持ってくれてるのも知っている。  俺もきっと敦の事が好き。  いや、でもはっきりそう言い切れない。  ……わからないんだ。  寂しくて、誰かに甘えたい。  もしかして俺も敦の事が好き……でもまた誰かを好きになって辛い思いをするのが怖い。  いろんな感情が渦巻いて、だから敦の気持ちに応えることができないでいたのに。でもやっぱり寂しい気持ちが大きくて、誰かに触れてもらいたいって思ってしまった。  ……淺ましい。 「いいよ、敦の好きにしても……」  俺を抱きしめている敦の手にそっと触れ、深呼吸してからそう言って俺は覚悟を決めた。

ともだちにシェアしよう!