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82 溢れる
「悠さんって……敏感なの?」
耳元で囁かれ、また意に反して甘い声が漏れてしまう。
「もっとその声……聞かせてよ」
着ていたシャツを捲り上げられ、俺は腕を上げてそれを脱ぐ。
やっぱり人に肌を晒すのは恥ずかしかった。そんな俺の思いなんて知らない敦は満足そうに微笑み、首筋から胸へとキスを這わした。
「あっ……んっ」
上半身に気を取られていると、スウェットの上から中心部をグッと握られ、また声が漏れる。
まだ下は触られてもいなかったのに……
自分でもわかるくらいに俺のそこははしたなく濡れていた。
「やぁっ……んんっ……だめ……」
敦は俺の反応を確かめるようにじっと見つめ、布越しにそこを扱く。
「嬉しい。悠さんこんなになってる……気持ちいい? ねぇ、脱がせてもいい?」
「………… 」
いちいち聞かないでほしい。
恥ずかしさで顔を覆いたくなった。
俺の顔を見つめながら緩々と扱く敦にしがみつき、早くもこみ上げてきそうな欲を必死に抑える。
「あ……やだ……イきそう……だから…… 」
堪らずそう溢すと、敦がふと俺の上から少し離れる。
「悠さん色が白くて綺麗……興奮してくると肌がピンク色に染まってくの、色っぽい」
「……! 」
顔を上気させ、興奮した様子で俺を見下ろす敦のそのひと言で我にかえった。
一気に頭の中で初めて陸也に抱かれた日のことが蘇ってきてしまった。俺を抱きながら、肌が白くて綺麗だと、ピンク色に染まるのが綺麗だと陸也が言ってくれたんだ……
「……え?……悠さん?」
驚いた顔をして敦が俺の頬に触れる。
「ごめん……悠さん、何か思い出しちゃった?」
オロオロしながら、俺の目から次々と溢れてくる涙を手で拭ってくれる敦に、俺はどうしたらいいのかわからずただ黙って顔を逸らした。
最悪だ……
なんでこんなに涙が出てくるのだろう。
「うっ……うぅっ…………ごめ……ん、敦……」
何の涙かわからない。
堰を切ったように溢れてくる涙を止める事ができない。人肌に触れたい、甘えたいと俺の方から誘ったようなものなのに……
「敦……ごめん、俺…… 」
申し訳なさで消えたくなった。
「悠さん謝らないで。いいから……俺の前でなら思いっきり泣いていいから! ごめんね……俺が性急すぎた。大丈夫だから……これ以上何もしないから……大丈夫だから。いくらでも泣きな」
そう言って敦は俺の事をギュッと抱きしめ、涙が止まるまでずっと頭を撫でてくれた。
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