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95 反対
陸也に「付き合ってる相手は俺の知った奴なのか」と聞かれたので、相手は敦だと教えた。案の定、あからさまに嫌な顔をされてしまった。
「マジかよ……何であいつなんだ?」
志音の事があるからだろう。嫌悪感丸出しで酒を呷る陸也を見てちょっと胸が痛んだ。
「ごめんな。でもやっと好きになれたんだ……俺の事好きだって言ってくれたんだよ。俺も恋愛……してもいい……だろ?」
もう一人は嫌だ。不安でいっぱいだけど、この先どうなるのかわからないけど、でも陸也には祝福してもらいたかった。
「ごめん。でも大丈夫なのか? あいつ遊んでんじゃねえのか? 俺は悠が幸せならいいんだけど、でも……ああ、心配だなおい」
陸也の言いたいことはわかる。でもそんなに信用ないのか、敦のあまりの嫌われ具合に俺は腹が立つよりも逆に笑ってしまった。
「敦ってああ見えて可愛いところあるんだよ。陸也が思うよりずっと純粋かもしれない……お前もそうだったろ? 見た目、今の姿だけ見て決めつけないでほしいな」
「……ああ」
陸也と再会した時、まともな恋愛なんてできるはずがないと言っていた。寂しい時に誰かを抱ければそれでいいなんて言っていた陸也。俺と再会して、そして志音と出会って……大切な人と出会った陸也を見てるから。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
納得のいかなそうな顔の陸也のグラスに自分のグラスをチンと合わせ、俺は一気に飲み干した。
それからしばらく二人で話し、店を閉めて俺は一人で帰宅した。
陸也の反応は、まぁわかっていた。
あまりいい顔はしないだろう、と。それでも俺のことを思ってのことだと思うとやっぱり嬉しかったんだ。
いつもと同じ、一人の部屋でシャワーを浴び一杯飲んでソファで寛ぐ。
相変わらず敦から連絡はない。
寂しかったけど、仕事が忙しいんだろうと自分を納得させ、なんとなくテレビを眺めながら眠りについた。
翌朝早くに電話の音で目を覚ました。
呼び出し音がうるさかったけど眠気の方が勝ってしまい俺は電話を無視した。それでもしつこく鳴っているので、二度目のその電話を渋々取った。
『おい! やっぱり俺は反対だからな!』
突然大声で怒鳴られ、寝呆けていた俺は電話の主が誰かもわからなかった。
「へ?……誰?……何?」
『あ、ごめんな、寝てた? 俺は敦はやっぱり駄目だと思う。てか、駄目だ! 嫌だからなあんな奴!』
電話の主は陸也だった。
不躾になんだ? うるさいな……
寝起きなのもあって、俺は適当に陸也の話を遮って電話を切った。
寝惚けたまま、冷蔵庫から水を取り出しひと口飲む。少しずつ目覚めたところでテレビをつけると、賑やかなワイドショーが聞き覚えのある名前を呼んでいた。
「……え 」
寝惚けた頭が一気に冴える。
目が覚めたものの理解が出来ない。
そこに映っていたのたのは新人女優の熱愛報道だった。
「何でテロップに敦の名前があるんだ?」
その女優の経歴と、これから公開される予定の初主演映画の撮影の話題……そしてそこで初めて出会ったのが交際のきっかけだとワイドショーのレポーターが笑顔で話している。
誰が?
誰と?
何で敦の映像が流れてるんだ?
全くもって俺には理解不能だった。
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