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102 計画
「悠さん、俺と一緒に住まない?」
敦がタブレットに指を滑らせながら俺に言う。
一緒に住む? 誰が? 俺と?
突然の事に、頭がついていかなかった。
「えっとね、ルームシェアして一緒に住みたいなって思って。同棲とも言うかな?」
えへへ、と照れくさそうに俺を見る敦の顔が赤くなってる。
「ほら……見て。この辺りとかね、ちょうどいいと思うんだよ。悠さん店から離れるの嫌だろ? 俺、良さそうなところ調べておいたんだ。考えてみてよ」
俺にタブレットを差し出し、期待した目で見つめてくる。
……同棲?
考えてもみなかったことに動揺を隠せなく、思わず黙り込んでしまった。
「あ、ごめん。勝手に一人で盛り上がっちゃって……ほらさ、帰ってきて一人じゃないのってさ、好きな人がおかえりって言ってくれるのってさ、モチベーション上がるじゃん? 俺、悠さんの顔見るだけで元気出るんだよ。いつも一緒にいたいし、いてやりたいし……」
敦にしては珍しく少し興奮したような、緊張したような感じで早口にそう言った。
「でも悠さんの都合もあるよな。いや、無理ならいいよ? 気にしないで……」
敦は慌てた様子でタブレットを閉じようとするので俺はその手を止めた。
「無理じゃない! 嬉しい。嬉しくて……びっくりした。もう一度よく見せてよ」
敦からタブレットを取り上げ自分でページを開いていく。今まで敦が見ていたのか、いくつかの似たような物件が出てきたのでそれらも全て俺もチェックした。
「生活スタイルが違うから、一応個室は各々あった方がいいだろ? そんなに広くなくてもいいけど、バスルームは狭いのは嫌だな」
「個室でも、でも……寝るときは俺、悠さんと一緒がいい」
二人で色々な物件の間取りを眺めながら、ああでもないこうでもないと盛り上がる。そして、このマンションの近くの物件と、店から少し離れるけど理想の部屋を二件見つけ、どちらかにしようと決めた。
「とりあえずさ、早く二人で住みたいね。悠さん。今日は泊まってもいい?」
タブレットを床に置いた敦に腰を捕まえられる。グッと抱き寄せられ、背中に回された手がゆっくりと這い回るだけで俺は力が抜けてしまう。
「悠さんさ……感じやすいよね? ふふ……可愛い。大好き」
「あ……耳、だめ」
既に俺の弱い場所を知り尽くした敦は、ピンポイントで俺をじわじわと攻めてくる。いつも敦のペースなのが悔しくて抵抗してみるけど、結局敦に甘えたい俺は言われるがまま、されるがままにグズグズに溶かされてしまうんだ。
これでもかというくらい、ゆっくり丁寧な愛撫に、勝手に涙が出てきてしまう。
敦と付き合い始めてから、俺はどれだけ嬉し涙を流してるのだろう。感情の起伏についていけなくなることが多くて自分でも戸惑う。
「一緒に住んだらさ……こうやっていつでも好きな時に悠さんを抱けるんだね」
おいで……と言われた俺は敦の上に跨り、下からギュッと抱きしめられる。敦の手がゆっくりと俺の尻を撫で回し、俺は堪らずキスを強請った。
好きな時に求めることができる。
いつでも必要としてくれる。
抱きしめられる度に幸せを実感する──
これでも十分幸せなのに、この後俺は更に敦に驚かされ泣かされるなんて、夢にも思っていなかった。
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