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103 待ち合わせ

 数日後、敦から連絡が入った。  二人で目星を付けていた物件のうちの一つに決まったから、不動産屋に行き手続きをしてくるとのこと……  たまたま今日は仕事がなく一日オフなので敦が全て手続きをし鍵を受け取りに行ってくれるらしい。  二人で決めてすぐに不動産屋に行かなかったのは、敦の所属する事務所の許可が必要だったからだ。周りの環境やセキュリティ面をしっかり把握する必要があるらしく、やっと社長の許可が下りたので手続きを進めることができたのだと敦が教えてくれた。 「うちの事務所、超過保護! 心配性なんだよな」  そう言って電話口で敦が笑う。でも志音からも社長の話は聞いたことがあったのでその人物像は察しがついていた。とても信頼できる懐の深い人だと感じていたので俺も安心だった。  でも、敦ほどのタレントがよくわからない一般人とルームシェアなんて社長はどう思っただろうか。友人と……とでも言ったのだろうか。敦の収入を考えたら、他人とルームシェアをする必要性も考えられない。不審に思われなかっただろうか。それを考えると何だか敦に申し訳なく思ってしまった。 「一応ルームシェアっていう形で、契約者は代表一人でいいって言ってもらえたから俺になってるし、保証人も真雪さん……あ、うちの社長ね、だから悠さんは何も気にせずに。今日の夕方契約して鍵受け取ってくるから。悠さん今日は店休みだろ? 晩飯一緒に食おうぜ」  契約に行くのなら俺も一緒の方がいいと思いそう言っても、他にも色々用事もあるし忙しいから来なくていいと言われてしまい、少し寂しかった。でも昼夜逆転生活に近い俺の事を気遣って言ってくれてるのかもしれないと思い直し、素直に任せることにした。 「じゃあまた、夕方にでも連絡する」  敦はそう言って電話を切った。  俺は引っ越しはいつ頃になるかとか、何を処分して何を購入するかとか、少し浮き浮きしながらそんな事を考え、またベッドに横になった。  ウトウトと眠りについたところで、また枕元に置いておいた携帯が鳴った。チラッと時計を見ると、横になってから二時間ほど経っていたのがわかる。  そんなに眠っていたのか……  ちょっと驚きながら携帯に出ると、また敦の声が寝起きの頭に飛び込んできた。 「あ、寝てたね? 起こしてごめんな。晩飯、店予約したから六時に店で……店の地図、送っといたから確認しといてね。それじゃまた後で、ばいばいハニー!」  用件だけ言って敦はさっさと電話を切ってしまった。  ……随分と上機嫌だったな。  俺は横になったまま、携帯に送られてきていた地図を見る。 「え? この店って……」  とりあえず約束の時間までまだ少し余裕があるのでシャワーを浴びる。浴びながら着ていく服を考えた。 「何であの店なんだ?」  てっきり夕飯は、敦のお気に入りのモツ煮が美味いあの居酒屋かと思ってた。でも敦が指定してきた店はここらではちょっと有名な高級レストランだった。どう考えても「ちょっと飯でも……」という店ではない。 「何着て行こう……あれ? もしかして敦、誕生日か何かかな?」  どうしても、敦があの店をチョイスした理由がよく分からず、もしかしたら敦は誕生日なんじゃないかと本気で考え、途中で何か買って行こうと俺は早めに出ることにした。

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