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第10話

「そういや、おまえ、あの夜は髪と瞳が赤かったよな」 「ああ。うん。あれが本来の姿だ」  空はそう言ったかと思うと、ゆっくりと目を閉じた。  すると髪の毛の色がグラデーションを描いていき、やがて真紅になる。  そして次に目を開けたときには瞳も真紅になっていた。 「地球人も同じ髪色に染めたり、カラコン入れたりしてるから、このままでも俺は構わないんだけど。父さんと母さんが嘆くだろうし、高校の生活指導の教師にもうるさく言われるだろうし。……なあ、食べないならそっちのケーキももらっていい?」 「どうぞ」  自分の前に置かれたショートケーキを空の方へとすべらせる。空は二個目のケーキもとてもおいしそうに食べ始める。  偉そうだが、意外と真面目で、意外とかわいいところもあるんだな、と雪人は目の前のエイリアンを見ながら思う。  そしてふと疑問に感じた。 「ところで、空、おまえ本当は幾つなんだ? まさか一万歳越えてるとか言わないよな?」 「俺は正真正銘の高校一年生で十五歳だ」  口の周りに盛大に生クリームをつけながら、空が睨んでくる。 「おまえの星にも高校ってあるんだ?」 「俺の星と地球はよく似てる。だから俺はここに来たんだ」 「いつ、来たんだ?」 「一年ほど前」 「あのUFOに乗って?」 「まーね」 「おまえの本当の親は心配してないのか?」  それまでは淡々と雪人の聞くことに答えていた空だったが、雪人がそのことに言及した途端、真紅の瞳に昏い影がさした。 「父さんも母さんも、姉さんも死んだ」  そう呟いて目を伏せる。 「……悪い」  謝る雪人に、空は殊更平気そうな口ぶりで答える。 「いいよ。別に」  明らかに無理をしていると分かる空の様子に、雪人はなんだか無性に哀しくなった。

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