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第12話
「このガキ」
雪人は空に手を伸ばすと、柔らかそうな頬をほんの少し強くつねってやる。
すると途端に。
「いっったいー……!」
空はポロポロと涙を流して痛がった。
いきなり泣かれて雪人はびっくりして手を離す。
少しだけ強くつねっただけである。それなのに空の痛がりようは尋常じゃない。
「なにすんだよっ。殺す気か!?」
「んなオーバーな……って、待てよ。もしかしておまえ」
「な、なんだよ?」
空はまだ涙をいっぱい目に溜めているが、雪人がつねったところは少し赤くなっているだけで、勿論血も出ていないしアザにもなっていない。
「おまえって、もしかして異常に痛覚が鋭いとか?」
「そ、そんなことねーよ」
「じゃ、もう一回つねってもいいか? 今度はもっと強く」
ニヤリと笑って手を伸ばすと、空は体を縮こませて逃げる。
「嫌に決まってるだろ。このDV家庭教師っ」
痛覚が鋭いというのは、どうやら図星だったようだ。
空が特別なのか、空の星の人類は全てそうなのかは分からないが。
「これから俺たち仲良くなれそうだな、空」
「誰が。母さんに言って、あんたなんてすぐにクビにしてもらうっ」
空は叫んだが、その願いは叶うことはなかった。
ほんの少しつり気味の切れ長の目が特徴的なイケメンの雪人は、大学でもそれ以外でも女性にモテまくっている。
その能力は空の母親にも遺憾なく発揮されて。
「今日は自己紹介と雑談だけでしたが、明日からはじっくりと勉強しますので」
ニッコリと笑いお辞儀をすると、母親の方は雪人を一も二もなく気に入ってくれた。
「母さん、俺、こいつ気に入らねーから、家庭教師なら誰か別の奴を」
空がわめくも、母親に取り合ってもらえず、
「空! 先生に失礼でしょ。本当にあんたはわがままで口が悪いんだから。少し先生にそういうところも直してもらいなさい」
ぴしゃりと切って捨てられていた。
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