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第17話

        * 「はあ……疲れた」  空は小さな溜息をつくと、握っていたシャーペンを放り投げた。  猫のように伸びをすると椅子から立ち上がり、ベッドへ横になる。  この日は日曜日なので、先週から通ってくるようになった家庭教師の雪人は休みだ。  空は目を閉じて、雪人の端整で大人びた顔を思い浮かべる。  本人には口が裂けても言えないけれど、空は雪人のことが好きになりかけていた。  初めてUFOの中で出会ったときは、偉そうな態度にただひたすら反発心を覚えたけれど。  雪人は『あいつ』とは違う。  俺から大切なものを奪い、全てを壊しつくすあいつと雪人はまったく違う。  上から目線だし、Sっ気もあるけれど、雪人はやさしい人だ。 「好きになりかけてるんじゃなくて、もう好きになっちゃってるのかも」  だって雪人と会えない土曜日と日曜日はひどく寂しい。早く明日になって雪人と会いたいと思う。  こんなふうな気持ちを抱いた相手は故郷の星にいたときにもいなかった。  空の星では異性愛と同じに同性愛も一般に受け入れられている。  ほんの少し地球よりも色んなことが進んでいる星だから、そのうち地球も同じように同性愛が自然になる日がやって来るだろう。  けれども、残念ながら今はまだ地球では同性愛は少数派である。  雪人が空のことを好きになってくれる可能性はほとんどないし、それにエイリアンとの恋は(空の立場からすれば地球人の方がエイリアンである)悲劇しか生まない。  空は両手を額の上に置いた。  雪人のことをこれ以上好きになってはいけない。  だけど、自分を戒めれば戒めるほど、思いは大きくなっていく気がして。  空はそっと溜息をついた。

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