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第18話
*
「……ドライブ?」
おやつのシュークリームを頬張りながら、空が首を傾げる。
「そう。明日、どこかへドライブに行かないか?」
「…………」
空は無言で雪人を凝視している。
「なんだよ?」
「いや。それって俺のこと口説いてるつもりなのかなって思ってさ」
空の言葉に一瞬、雪人の心拍が大きく跳ねる。
好きになってはだめだと思えば思うほど、雪人は空のことを意識してしまうから。
ドライブに誘ったのは色っぽい理由からではないのだが、空を意識している雪人にしてみれば、心の奥底に抱いている邪な思いを見透かされたような気持ちになってしまう。
雪人は懸命に冷めたふうを装う。
「誰がおまえみたいな生意気なガキを口説くか。ご両親が明日から一晩法事で田舎へ帰るってことは聞いてるだろ?」
「ああ。俺は行かないけどな」
「ご両親がおまえを一人この家に置いておくのが心配だって言って、俺に泊まって欲しいって頼んできたんだよ」
「はあ!? なんだよ、それ。俺は一人でも平気だ」
反抗してくる空を無視して、雪人は言葉を続ける。
「それでせっかくだから明日はドライブにでも連れてってやろうかって思ったんだよ。勉強ばかりじゃストレスがたまるだろ? もうご両親には許可を取ってあるし」
「外に出るのは暑いから嫌だ」
愛想無く言い捨て、プイッと横を向いてしまう。
「車の中はクーラーがきいてるから」
それでも根気強く雪人が誘えば、
「先生、運転上手いの? 俺まだ死にたくないんだけど」
憎まれ口が返って来る。
「……おまえな。またつねるぞ」
しかし雪人も負けてはいない。
空の最大の弱点をついてジリジリと近寄って行く。
勿論本当につねる気などないのだが、途端に空は涙目になる。
「か、勝手にすればいいだろっっ」
くやしそうにオーケイの返事を叫ぶ空に、雪人は尊大に笑ってみせながらも内心ホッとしていた。
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