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第19話
家庭教師を始めてから二週間が経っていたが、空の周りに友人の存在が見えないことが雪人は気にかかっていた。
机の上に置いたままのスマホはいつも沈黙したままで、『地球人』の高校生が当たり前のように交わしているラインさえ、空はしていないようだ。
それとなく母親に訊ねてみたところ、今まで空が友人を連れてきたり友人が遊びに来たりしたことは、皆無らしかった。
空は休日も部屋に引きこもりがちで、出かけるのはコンビニと、たまに家族で外食をするときくらいらしい。母親もそのことをひどく心配していた。
泊りで遊びに来てくれるような友人は空にはいないようで、雪人にその役目が回ってきたわけなのだが。
……やっぱり地球の高校にはなじめないでいるのだろうか。
夏休み真っただ中だというのに、ほんの少しも日に焼けることなく、透けるように色白な肌をしている空を見ていると、雪人はなんだか切ない気持ちになって来る。
「じゃ明日の朝、十時に迎えに来るから。二日間いい子にしろよ」
「しかたないから付き合ってやるだけだ」
嫌々といったふうな口調で言葉を投げ捨てながらも、空の色白の頬と耳は真っ赤に染まっている。
参ったな、と雪人は思う。
こんなかわいいところ見せられたら、自分の気持ちにストップがかけられなくなっちまうじゃないか。
自分より六つも年下のわがまま高校生エイリアンに振り回される自分。
でも雪人はそのことが決して不快ではなかった。
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