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第22話
「……ところで、空、どこか行きたいとこあるか?」
「…………海、かな」
「分かった」
もう一度、空の髪をやさしく撫でてから、雪人は海へと向かう方向へハンドルを切った。
海の見えるカフェで昼ご飯を食べてから、二人は砂浜を散歩することにした。
ちなみに車の外に出るときは、空に茶色の髪と瞳に戻すように言い、空も素直にそれに従う。
自分のそれは大人げない独占欲に他ならないのだが、空が本来の姿を人前で晒すのを嫌がるのはただ単に目立つのを嫌うからだと雪人は思っていた。
なんだか二人の気持ちの温度差を感じてしまい、雪人は少しへこみ、そんな自分を自嘲する。
なんか情けないな、俺。
今までの雪人の恋愛は、より相手に想われ、いつも自分自身には余裕があった。
なのに、空が相手だと余裕もなにもなくなり、ただ空に俺のことをもっと見て欲しくて。
もっともっと空のことを知りたくて。
やっぱ、完全に空のこと好きになっちまったみたいだな、俺。
エイリアンとの恋愛なんて前途多難だけど。
それでもそのことさえ大した障害じゃないと恋する男は思ってしまうから不思議だ。
砂浜を歩きにくそうにする空に、雪人はそっと手を差し出す。
「ほら」
「……え?」
「歩きにくそうだから。こけたらきっとすごく痛いだろ、おまえ。だから、ほら」
空は少し逡巡してから、雪人の手をおずおずと握る。
空の、男の手にしては白くて柔らかい手を雪人は壊れ物を扱うようにそっと握り返した。
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