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第36話
次に空が目覚めたときまず目に飛び込んできたのは、雪人の端整な顔立ちのアップ。
「……気が付いた? 空」
「……雪人……」
いつの間にか体はきれいにされ、雪人に腕枕をされている。
「俺、どれくらい寝てた?」
酷く掠れた声で訊ねると、雪人はふんわりと笑って答えてくれた。
「二十分くらいかな……かわいい寝顔、じっくり堪能しちゃった」
「…………」
激しいセックスをして、散々あられもない姿を晒しておいて今更だが、空は急に恥ずかしくなってきた。
「空? どうした?」
「なんでもない」
「顔、真っ赤だぞ。ほんとかわいい……」
空がシーツで顔を隠そうとしても、雪人はそれを許してくれず、こちらを凝視してくる。
「そんなに見るなよ」
照れ隠しに睨んでみるが、自分でも目に力が入っていないことが分かる。
シてる最中は夢中で、乱れに乱れたが、こうして落ち着いてみると、自分の痴態はあまりにもひどかったような気がしてくる。
体中を赤く染め、恥ずかしがっていると、雪人がやさしく髪に触れてきた。
「……良かった……空がちゃんと感じて、何度もイッてくれて」
「なっ……」
それでなくても恥ずかしくてたまらないというのに、なんていうことを言うのだ。
さっきよりもほんの少し強いまなざしで睨んでやると、雪人は困ったように笑う。
「だから、そんなかわいい顔して睨むなって、もっといじめたくなるだろ」
おでことおでこをくっつけて、雪人が囁く。
「ほっ、ほんと雪人ってS……」
「そうか?」
「自覚ないの?」
「まあ、少しはあるけど」
クスクスと笑う。その笑顔は輝くように眩しくて。
今のこのひとときが永遠に続けばいいのに……。
心も体も許せるただ一人の相手の腕の中で空は心からそう願う。
「……空? どうした?」
「え? なにが?」
「なんか、急に哀しそうな顔になったから」
雪人が空の瞳の奥をのぞき込むようにして聞いて来る。茶色の切れ長の目は空の心の中をすべて見透かしてしまいそうなくらい深く澄んでいる。
「…………そんな顔なんて、してない」
空は雪人の視線から逃れるように、その胸元へ顔を押し付けた。
トクトクと脈打つ雪人の胸の鼓動。
それを聞いていると空はとても安心できた。
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