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第41話
朝食のとき、前日の様子が変だった訳を聞いてみたが、空はすっとぼける。
「昨日はここへ来たい気分だっただけ」
「嘘言え。顔色は真っ青で震えていたじゃないか」
「気のせいー」
トーストをかじりながら素っ気なく答える空に対して雪人は核心に迫った。
「窓の外を歩いていた紅い髪の大男を見たんだろ? あの男、おまえと同じ星のやつなんじゃないのか?」
「……俺はそんな男見てないし。だいいち髪を紅く染めて、紅いカラコン入れてる地球人だっているだろ」
「おまえ、もしかして、あの男と知り合いなのか?」
「そんなわけないだろっ」
とうとう空が怒りだしたが、雪人は彼の言葉尻を捉えた。
「俺は紅い髪の男を見ただけだ。なのに、おまえはあの男が紅い目をしていることまで知ってる」
空は一瞬口籠ったが、すぐにまた言い返してくる。
「だから、そんな男知らないって言ってるだろ。雪人ってばしつこいよ」
そして壁にかかった時計を見ると、
「うわ。もうこんな時間。学校に遅刻しちゃうじゃん。もう雪人が変なことばっか言うから」
慌てて立ち上がり、制服のブレザーを羽織る。
「おい、空、待てよ」
「行ってきます」
そのままそそくさと逃げるように部屋を出て行ってしまった。
部屋に一人取り残された形になった雪人は深く溜息をつく。
あれだけ否定するのは本当に知らないからなのか、それとも逆に図星だからこそ否定するのか。恐らく後者だろう。
「なぜ何も話してくれないんだ? 空」
雪人は己の無力感を強く感じ、再び重い溜息をついた。
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