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第48話

『……空……』  最初は空耳だと思った。  彼を恋しがるあまりに聞こえて来た声だと。  しかし、その声は空の耳ではなく、確かに頭の中に直接響いて来る。 『空……どこだ……空……』 「え……? 雪人……?」  空の脳に直接に語り掛けて来る声は間違うことのない恋人の声で。空はにわかには信じられない。  どうして、雪人がテレパシーを……。  地球人にはテレパシーの能力はないはずである。  もしかしたら例外的に力を持っている地球人がいるとしても、少なくとも雪人にはその能力はないはずだ。  混乱しながらも、空は無意識に雪人の呼びかけに応えていた。 『雪人? どうして……?』 『空、空なんだな? 今からそっちへ行くから』 『えっ……待って、雪人』 『待たない。絶対に逃がさないからな、空』  さっきよりもはっきりと雪人の声が頭の中で響く。  テレパシーがGPS機能の代わりになって、空のいる場所を雪人に教えているのだ。  どうしよう、どうしよう。  会いたくない、でも会いたい。  空がおたおたと迷っているあいだにも、雪人はどんどん近づいて来て、ついにはUFOの扉を潜り抜けて、入ってきてしまった。

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