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第52話

        * 「立場が逆なら……そうだな、俺はおまえに殺してもらうかな」 「え……?」 「俺は弱いからな。おまえがいなくなるくらいなら、いっそおまえの手で殺めて貰いたい」 「……雪人……」 「いつかさ、俺がおまえを置いてくときが来たとして、そのときにおまえが望むなら俺がこの手でおまえを殺してやるよ」 「……本当に?」 「ああ。約束する。俺はどんなときでも空の傍にいるし、空の願いを叶えてあげる」  殺すとか物騒な話をされているのにも関わらず、空は胸が甘美なもので満たされるのを感じた。  雪人は俺を置いて先に逝ったりしない……その事実はなによりも空の心を救った。  ずっと長いあいだ心に憂いていたものが流れ去っていくのを感じる。  それでも空の屈託が全くなくなったわけではない。『あいつ』の存在が深く悩みの根を伸ばしていた。  雪人も敏感にそれを察知したようで。 「空、まだ聞きたいことがある。喫茶店で見かけたあの紅い髪の大男のことだ。おまえはあの男のこと知ってるのか?」 「それは……」  空は雪人にあいつのことを話すべきが迷う。  話してしまうことによって雪人に危険が及ぶのではないかという不安がどうしても拭いきれないからだ。 「……話さないなら、またいじめるよ? 空」  すっかり固さを取り戻した雪人が空のイイ場所を狙って勢いよく突き上げて来る。 「あっ……あっ……、話す……話すから、そこ、やめ……」  空は恋人の体に縋りついて懇願し、呼吸が落ち着くのを待ってから、ゆっくりと打ち明けた。

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