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第53話
「………雪人の言う通り、あのとき喫茶店の外を歩いていた紅い髪の大男は俺の星のやつで、俺はあいつのことを知ってる……」
「やっぱり。どうして隠したんだ?」
「俺自身、狼狽えてしまってどうすればいいのか分からなかったんだ……本当に。まさかあいつが地球まで追って来るなんて思ってもみなかったから」
空の真紅の瞳に強い恐怖の色が浮かぶ。
「いったい何者なんだよ、そいつは」
「化物みたいな男。……俺の家族はあいつに殺されたんだ」
恐怖の中に激しい怒りが加わる。
「え……?」
空の言葉に雪人が絶句する。
「あいつは俺の同級生で、なぜか俺を気に入って、なにかと絡んできた。でもあいつの乱暴さは有名だったし、どうしても好きになれなくて。あいつに会いたくないから俺は不登校になっちゃったんだ。そしたらあいつは家にまで押しかけてきて、俺を守ろうとした家族を次々手にかけて……」
「……警察には……?」
「捕まったけれど、証拠不十分で釈放された。警察もあいつが怖いんだよ。あいつはね、雪人、特異体質で普通のやつみたいに感覚が鋭くないんだ。痛みに強く頑丈でその上性格は残忍なサイコパス気質。そんな化物から俺は逃げ出すように地球に来たのに、あいつはここまで俺を追いかけて来た。多分、このUFOを見つけるのも時間の問題だと思う」
「空……」
小さく震えだした空の体を雪人はやさしく抱きしめてくれる。
「俺はもう誰も失いたくない。地球の父さんや母さんも。それから誰よりも雪人を失いたくないんだ」
「だからご両親の暗示を解いて、俺からも逃げ出したのか……?」
空は弱々しくうなずく。
「空、俺は負けないよ? 絶対におまえを守ってみせるから。そんな不安そうな顔すんな」
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