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第54話

「でも……っ……!!」  空が言葉を切り、ぎくりと体を強張らせた。 「空?」 「あいつが来る。もう近くまで来てる」  なんで? なんで、こんなに早くここが分かった?  …………ああ、そうか。さっき雪人とテレパシーのやり取りをしたから、あれをあいつがキャッチしたんだ……だから。 「雪人、逃げて。あいつの目的は俺だから。あいつが来る前にここから――」 「馬鹿なこと言ってんじゃねーよ。なにがあっても俺はおまえを守る。さっき約束したばかりじゃないか。俺はどんなときでもおまえの傍にいるって」 「それは……でも、だめだよ。地球人は絶対にあいつには敵わない。お願いだから逃げて。雪人まであいつに殺されちゃったら、俺……俺、どうしたらいいか……」  それでも雪人は首を縦に振らない。空の中に入ったままだった雄を抜くと、素早く衣服を整えた。  雪人のシャツに縋る空の手がガクガクと震えだす。   だめだ、もう間に合わない。あいつがすぐ近くまで来ている。  もうすぐあの扉を開けて入って来る。  怖い。どうすればいい? どうすれば……。  そのとき雪人が空の真紅の髪にやさしくキスをし、 「平気だから。俺はそんなに簡単に殺されたりなんかしない」  震えが止まらない手を大きな手で包んでくれる。刹那の安堵を感じ、手の震えが止まった。 「雪人……」  しかし、次の瞬間。  バンッ!!  鋭い破壊音とともに扉が吹っ飛び、化物と恐れられる男がUFOの中に入ってきた。

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