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第55話

          *  空と同じ真紅の髪と瞳。だが空の瞳が深く澄んでいるのに比べて、男の瞳は酷く濁っている。  男は空が見知らぬ地球人と一緒にいるのを見て憤怒の表情を浮かべた。 「おまえは誰だ? 地球人の分際で俺のモノに触るんじゃねぇ」 「あいにくと空が好きなのはおまえじゃなくて、地球人の俺の方なんだよ。おまえの方こそとっとと失せな」  雪人は男に向かって中指を立ててみせると、空を自分の後ろへ隠した。 「てめぇ、死にたいみたいだな」  より一層怒りの色をその顔に貼り付けて、男が一歩ずつ雪人の方へと歩いて来る。  近くで見ると、そいつは一層巨大に見え、大きな体全体に邪悪なオーラをまとっている。  先に攻撃してきたのは男の方だった。  ごつい手で殴りかかって来るのを雪人はなんとかかわした。  そのまま攻防すること数十分。    どちらにも大きなダメージはなかったが、さすがに化物というあだ名がつくくらいの野郎だ。その体力は半端なく、雪人が肩で息をし始めても、そいつは少しの疲れも見せない。圧倒的に雪人の方が不利だった。 「雪人!」  空が雪人の前に飛び出して来て、男に向かって叫ぶ。 「もうやめてくれ。おまえの目的は俺だろ!? 頼むから、これ以上雪人に暴力をふるうな」 「空、そこどけ。まだ勝負はついてないんだから」 「もういい。もういいから雪人」 「空、なにがあっても、俺はおまえを守ってみせる……そう言っただろ」  空に笑いかけ、その細い体をもう一度自分の後ろに庇ってから、雪人は男に殴りかかった。 その一撃は見事に顔にヒットし、男の足元が少しだけ揺らぐ。  だが、雪人の攻撃はそこまでだった。  紅い髪の化物はすぐに体勢を立て直すと、雪人のお腹を太い脚で思い切り蹴り上げる。  綺麗な筋肉はついているものの、雪人はスリムな体型である。蹴りを直撃した体は後方へと倒れ込み、複雑な機器の角へ後頭部を強く打ち付けた。 「……っう……」  頭にすごい衝撃が走る。  それでも尚ふらつく体を起こし、紅い髪の男へ立ち向かおうとしたが叶わず、雪人はその場へ崩れ落ちた。 「……きとっ……雪人っ……」  狂ったように自分の名前を呼ぶ空の声が遠くに聞こえる。 「……空……」  雪人は渾身の力を振り絞って恋人の姿を探そうとしたが、目の前が霞んではっきりと見えない。 「そ……ら……」  もう一度空の名前を呼んだのを最後に雪人の意識は闇に閉ざされた――――。

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