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第56話
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「雪人っ」
後頭部を強打した雪人は空のすぐ傍で力なく横たわっている。
空が雪人の体を抱え起こすと、後頭部からおびただしい血が溢れ出した。
「やだ、雪人……やだ……」
こんなに血が出たら、雪人が死んじゃう……雪人が……。
空が流す涙と雪人の出血が混ざり合う。
空の能力を使っても、ここまでのひどい怪我は治すことなどできない。
みるみるうちに雪人の顔から色が失われていき、温かな体温が奪われていく。
いとも簡単に地球人は命を落としてしまう。
「空、地球人なんか所詮その程度の軟弱な生き物なんだよ。おまえは俺のものになる運命なんだからこっちへ来い」
男がいやらしい笑いを顔に貼り付け、空のもとへと歩いて来る。
「来るな! おまえなんかと一緒に行くくらいなら、このままここで雪人と一緒に死ぬ」
空は雪人の頭を抱きしめたまま叫んだ。
「……! てめぇ。甘い顔してりゃつけあがりやがって」
男が空のすぐ近くに来て、細い腕を乱暴につかむ。
「痛っ……やめろっ……離せっ!! 離せってば」
激痛に空が悲鳴を上げても、男は笑いながら尚も腕をつかむ手に力を入れるだけだ。
あまりの痛みに空の意識が遠くなりかける。
そのとき。
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